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膵炎(すい炎)

急性膵炎

膵臓に炎症が起きる疾患を膵炎と呼び、中でも急激に炎症が起きた膵炎を急性膵炎と呼びます。

膵臓は様々な消化酵素を生成・分泌する働きをしている臓器とされ、たんぱく質を分解する酵素も分泌しています。

通常は膵臓自体が膵液によって消化されたり、他の臓器を消化することはありません。

しかし、消化酵素の分泌機能が乱れることで膵臓の内部や周辺が自己消化されてしまうのです。

この自己消化によって膵炎が発生し、急性膵炎ではそれが急激に起こるために症状も強くなります。

急性膵炎の重症度判定

急性膵炎は重症度によって軽症・中等症・重症に分けられ、判定には厚生労働省急性膵炎重症度判定基準が用いられます。

また、重症度の評価にはRansonスコア・Glasgowスコア・APACHEスコアが使われます。

急性膵炎が重症化した場合、致命率が高いことから難病(特定疾患)にも指定されます。

しかし、急性膵炎は良性疾患となり、一部の重症例を除ぞけば、早期に適切な治療を受けることで、膵臓は機能的にも形態的に概ね元のように回復するとされています。

急性膵炎の患者数

2007年の全国調査では急性膵炎による受診患者数は、約58,000人で1987年の調査以降この数字は増加傾向になっています。

全罹患者のうち重症に該当するのは約2割程度で致死率は8%程度(およそ12人に1人)だとされています。

対して軽症では致死率は0.2%、中等症では0.4%程度になることから重症では致死率が高いことがわかります。

重症患者においても生存者の85%は元の日常生活に復帰しており、「何らかの介助が必要」「生活での負荷を軽いものに変更する」等の必要がある人は約15%です。

急性膵炎発症数を男女比で見ると、男性:女性はおよそ2:1になり、男性の発症のピークは50歳代、女性では70歳代がピークでした。

重症化した症例数は男性では70歳代、女性では80歳代がピークです。重症化の男女比は男性:女性はおよそ1.8:1になっています。

急性膵炎には様々な原因がありますが、男女では要因の分布に差があります。

男性で最も多いのがアルコール性の急性膵炎ですが、女性では胆石性が多く、この胆石は中高年女性に多い病気です。


急性膵炎になる原因

急性膵炎の主な原因としては以下のようなものが挙げられます。
  • アルコール性
  • 胆石症
  • 慢性膵炎
  • 医療行為(検査・処置・手術など)
  • 高脂血症
以上の項目は2007年の急性膵炎に関する全国調査でも多く見られたものです。尚、原因となるこれらの項目には男女差や年齢差が見られます。

他に急性膵炎の原因としては、原因不明の場合(特発性)・薬剤性・外傷・先天性の膵胆管の異常などがあります。

原因の第1位は飲酒

アルコール性膵炎は飲酒習慣を持つ人や飲酒量の多い成人男性に多くなります。

アルコールの多量摂取は膵臓に負担をかけることになり、膵炎が起こる元となります。

胆石症が原因

女性の急性膵炎の原因として特に目立つのが胆石症です。

胆石症は中高年以上の肥満体な女性に多く、胆のうや胆管の中に石のような塊(結石)ができる病気です。

この胆石が胆道に落ち込み、膵液の流れを止めることが膵炎の原因となります。

胆石性急性膵炎は女性の急性膵炎の3~4割程度を占め、男性は約2割ほどになります。

また、加齢により胆のうや胆道系の機能低下でも胆石症は起こるため、男女ともに高齢になるほど胆石症による膵炎が増えています。

生活習慣

急性膵炎の発症は生活習慣が関係が言われており、例えば、アルコールの摂取は食生活や嗜好・生活習慣と密接に関わりがあります。

胆汁は脂肪を分解する働きをする消化液の一種のため、脂肪の摂取量や肥満と胆石症は関連が深いとされています。

高脂血症でも急性膵炎のリスクが高まるのですが、中性脂肪で高値を示すような高脂血症は胆石症と同様に高脂肪食・運動不足・肥満などとの関連が指摘されています。

また、膵臓を含む消化器系は自律神経系によって、その働きが調節されています。

そのため、ストレス・喫煙・睡眠不足などの生活習慣においても自律神経系や免疫系の乱れを招き、急性膵炎のリスクとなり得ることが考えられます。

急性膵炎の症状

膵臓の位置は奥まっているため、初期や軽度の炎症では際立った症状が起こりにくいとされています。

また、高齢者や糖尿病の持病がある方では痛みを感じにくいことがあり、重症でも症状がはっきりしないこともあります。

また、重症急性膵炎になると、ショック状態(血圧低下・意識消失・尿量減少など)に至る場合や皮下出血斑や呼吸障害などが起こることがあります。

2007年に行われた急性膵炎の全国調査で集計された主な初発症状には以下のようなものがあります。
  • 腹痛
  • 吐き気、嘔吐
  • 背部痛
  • 発熱、悪寒
  • 食欲不振
  • 軟便、下痢
  • 腹部膨満感
  • 黄疸
  • 全身倦怠感
  • 腸閉塞(イレウス)

腹痛・背部痛

急性膵炎の時に痛みを感じやすいのは心窩部の奥の痛みです。

膵臓が位置している中央から左側にかけて痛むことが多いとされています。

炎症が強くなったり、腸閉塞を起こすと腹部全体やみぞおち以外の場所にも痛みを感じたり、腹壁が硬くなる筋性防御が見られることもあります。

膵臓の位置は背中にも近いので背部痛となることもありますが、痛みの度合いは炎症の強さ・痛みの感じ方によって様々です。

初期や軽症・高齢者では痛みは軽度のこともしばしばあります。一方で耐えられないような激痛を訴えることもあります。

吐き気・嘔吐・食欲不振

膵臓の炎症によって胃や腹膜が刺激されると起こるのが吐き気・嘔吐です。

吐き気や嘔吐といった症状がない場合、食欲不振になることがあります。

一般的に膵炎による吐き気・嘔吐は吐いても軽減することはなく、何時間も続くことが多いです。

また、重度の腹膜炎によって腸閉塞を起こした時には嘔吐がみられ、嘔吐すると一時的に吐き気が軽減することが多いようです。

全身症状

全身倦怠感(体が怠い感じがする)や発熱・悪寒などがあります。急性膵炎で高熱や悪寒・震えなどが見られる場合には細菌感染の可能性が考えられます。

軟便・下痢、腸閉塞

膵炎を起こしている時とは分泌機能が何らかの乱れを生じた状態です。そのため、食べ物の消化がうまくいかずに軟便や下痢を伴うことがあります。

腸閉塞とは何らかの原因によって腸が詰まってしまう状態を指します。

急性膵炎では腹腔全体に強い炎症が起こるため、その刺激で腸の動きが抑制されて腸閉塞に至る場合があるのです。

腸閉塞が起きると腹部膨満感(腹部が張る感じがする)・鼓腸(おならが出せず腸内にガスが溜まる)・腹痛・吐き気・嘔吐といった症状が現れます。

黄疸

膵炎によって膵管が詰まってしまうと胆汁が分泌されなくなり、黄疸が出現することがあります。

また、胆石症は急性膵炎の代表的な原因疾患とされ、胆道の閉塞から膵炎を起こすこともあり、黄疸を伴うことがあります。


急性膵炎の治療

急性膵炎の治療は「急性膵炎診療ガイドライン」に則って行われます。

急性膵炎と診断された場合、原則として入院治療の対象となり、重症急性膵炎では全身管理、時には集中管理が必要になります。

また、診断時に軽症・中等症と診断されても、特に発症から数日間は重症化する可能性があるため、全身管理が必要になります。

急性膵炎の治療内容

全身管理の内容としては以下のようなものがあります。
  • 循環や呼吸のモニタリングと循環・呼吸管理
  • 膵臓の安静
  • 苦痛の緩和・除去
  • 膵臓の局所合併症の予防

循環・呼吸のモニタリングと管理

重症急性膵炎の主な死因は急激な全身性の炎症によるショック状態です。

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ショック状態とは血圧や脈拍の極端な低下により、全身の循環が維持されないことです。

血圧・脈拍・意識状態・尿量などがその基準となり、継続的な観察(モニタリング)と十分な輸液量(循環血液量)が必要となります。

膵臓の安静のため、急性膵炎の急性期では絶飲食が必須です。

急性膵炎では点滴治療が必須となり、尿量が確保できない場合には人工透析が行われる場合もあります。

全身性の炎症を起こしているのは、血中に出された炎症性物質であるサイトカインが原因と考えられます。

尿量が維持できないとサイトカインをしっかり排泄することができないため、透析をしてでもサイトカインを排出して炎症を抑えて病状の悪化を防ぐという意味があります。

また、血圧が下がると全身の組織の酸素不足が起こります。

全身性の炎症によって呼吸不全を起こすこともあり、組織への酸素量を維持することが必要です。

酸素飽和度のモニタリングが行われ、必要であれば酸素投与、重症例では人工呼吸管理が必要となる場合もあります。

膵臓の安静

通常、膵臓では飲食物の摂取に応じて、消化酵素を含む膵液を分泌しています。膵炎ではこの膵液によって膵臓が自己消化されている状態です。

治療では膵液の分泌を抑えるため、膵臓の安静を保つことが重要です。食事は膵臓の活動を盛んにするため、急性期や重症例では絶飲食をします。

一方で長期の絶食は腸内環境を悪化させ、感染症の発生頻度を高めるという指摘もあります。

これに対してはある程度炎症が小康状態となれば、小腸にまで届くカテーテルを挿入して栄養剤を注入する方法も試みられることがあります。

苦痛の緩和・除去

急性膵炎は時に激痛を伴うことがあり、この苦痛や興奮によって炎症性物質が増え、炎症が長引いて重症化する事態を招くこともあります。

苦痛の緩和に使われるものには鎮痛剤、時には医療用麻薬(モルヒネ以外)が用いられます。また、不眠時に鎮静剤が用いられることもあります。

膵臓の局所合併症・重症化の予防

致命的な合併症としては感染症が考えられます。特に重症急性膵炎や胆管炎を合併している場合には予防のために抗菌薬の投与が検討されます。

また、蛋白分解酵素阻害薬が投与されることもあり、膵臓の炎症とともに全身性の炎症の重症化を防ぐことができるとされています。

蛋白分解酵素阻害薬の投与は点滴で投与するのが一般的ですが、局所にカテーテルで注入する場合もあります。

その他の治療

急性膵炎では壊死した膵臓の組織を切除するなどの外科的治療が検討される場合があります。

また、膵液や膵臓に溜まった膿を排出するためのカテーテル治療、胆石に対するカテーテル治療などもあります。


急性膵炎の手術

急性膵炎の治療では外科的手術が行われることもあります。
  • 膵壊死部分切除術
  • 腹膜炎手術
  • ドレナージ術
  • 胆のう摘出術

膵壊死部分切除術

急性膵炎では、時に重症化して膵臓や周辺組織の壊死を伴うことがあり、膵臓や周囲の壊死した組織を切除する膵壊死部分切除術があります。

腹膜炎手術

重症急性膵炎では強い炎症によって腹膜炎を伴うことがあり、腹腔内に溜まった膿を洗浄するという手術があります。

ドレナージ術

腹腔内や炎症を起こした膵臓の周囲などに溜まった膿を排出するための管(ドレーン)を挿入する手術です。

ドレナージ術は手術とともに行われることが多く、外科的に切開をしてドレーンを挿入します

胆のう摘出術

胆石性膵炎に限定して行われます。胆のうごと結石を切除するため、胆石症の予防もできます。

急性膵炎の手術とリスク

壊死性膵炎や感染性膵壊死といった場合、手術によって壊死した部分を切除したり膿を取り除いたりする治療が推奨されていました。

しかし、外科的手術の適応となるような急性期には重症となる例が多く、ショック状態を伴うなど手術や麻酔の負担に体が耐えられないというリスクを考えなければなりません。

そのため、最近では内視鏡手術の技術が進歩しており、内視鏡手術は外科的手術と比べると体の負担も少なく行えます。

実際、急性膵炎でできる膿は液状であることが多く、内視鏡で排液することが十分に可能な場合が多くなります。

現在、膿を排出するために内視鏡を使って管(ドレーン)を入れて排出する内視鏡治療やCT検査や超音波検査を使って膿の位置を確認し、皮膚の上からドレーンを留置する方法(経皮的ドレナージ術)の方が外科的手術よりも多く行われています。

また、胆石性膵炎に対する胆のう摘出術の場合においても、全身治療や内視鏡治療を優先させ膵炎が回復した後、再発の予防目的で外科的手術を行うことが多いです。

急性膵炎の内視鏡手術

内視鏡手術は外科的手術と比べて手術時間は1~2時間程度で済み、全身麻酔が必要なく、傷もないので苦痛が少ないといったメリットがあります。

急性膵炎で行われる内視鏡手術は、ERCP(内視鏡的胆管膵管造影)により、膵管や胆管を造影して行われます。

造影により膵管に閉塞や膿が確認できた場合、内視鏡でチューブを留置して排出することができます。

また、胆石や膵石などで膵管が閉塞しているような場合、内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)といった内視鏡手術があります。

慢性膵炎

慢性膵炎の進行は緩やか

慢性膵炎とは、慢性的(ゆっくりと)な炎症が膵臓に起こることで、少しずつ膵臓の細胞や組織が硬く変化していきます。

慢性膵炎では細胞や組織の変化は不可逆的で治療をしても組織が元の機能を取り戻せません。

そのため、慢性膵炎では進行が緩やかとなり、膵臓の機能が低下していきます。

また、組織の変化によって膵臓内に結石ができたり、組織が壊れて急性膵炎に移行したり、さらに変性した組織から膵がんを発生するリスクが高まるとされています。

慢性膵炎の症状

慢性膵炎では、炎症による腹痛・背部痛や腹部の圧痛(押さえたときに起こる痛み)、消化機能の低下による下痢や食欲不振、さらには内分泌機能の低下による糖尿病などが主な症状となります。

進行が緩やかであることから、顕著な症状が見られない無症候性型の場合もあります。

慢性膵炎の検査

膵臓から分泌される消化酵素に関連した項目が、血液検査や尿検査にての数値が上昇、または超音波検査やCT検査などの画像検査で組織の線維化や石灰化が見られるのが特徴的な所見です。

慢性膵炎の分類

慢性膵炎は原因によって大きく以下のように分けられます。
  • アルコール性慢性膵炎
  • 非アルコール性慢性膵炎(アルコール以外の原因による慢性膵炎)
尚、自己免疫性膵炎や閉塞性膵炎は治療によって膵臓の組織が回復することがあることから、他の慢性膵炎とは分けて考えるのが現在では一般的です。

また、進行が軽度なものは早期慢性膵炎に分けて考えられます。

膵酵素が高値を示している状態を代償期、高値でない場合を移行期・非代償期と見なされ、それぞれ治療方針が異なってきます。
  • 代償期:代償期は治療によって膵臓の機能が維持可能な状態。
  • 非代償期:非代償期では炎症が進行して既に膵臓の機能障害も来している状態。
  • 移行期:代償期から非代償期の過渡期にあると見られるのが移行期です。

慢性膵炎の患者数

2007年の厚生労働省による全国調査では、慢性膵炎による患者数は約47,000人で調査開始からこの数字は増加傾向となっています。

慢性膵炎は男性に多い病気とされ、男性:女性はおよそ4~5:1で男女ともに発症のピークは50歳代とされています。

慢性膵炎の発症に大きく関与しているのは飲酒習慣となり、喫煙においても慢性膵炎のリスクを高める要因の一つだと考えられています。


慢性膵炎になる原因

慢性膵炎の主な原因としては以下のようなもの挙げられます。
  • アルコール性
  • 特発性(明らかな原因がわからないもの)
  • 胆石症
他に数少ないものとして膵臓の損傷や高脂血症によるものがあります。

自己免疫性膵炎と閉塞性膵炎は、慢性膵炎とは別の膵炎として考えるのが現在は一般的です。

理由は自己免疫性膵炎と閉塞性膵炎は治療により、組織が回復可能な場合があるからです。

これに対して慢性膵炎では炎症により不可逆的変化(組織の修復ができない)をきたす病気だからです。

急性膵炎から慢性膵炎に移行する場合もあり、十二指腸憩室がある人は急性膵炎を繰り返しやすく、慢性膵炎になるリスクが高いことが言えます。

原因の男女比

慢性膵炎全体として多いのはアルコール性で男性が約7割、女性が約3割となり、全体では約6割となっています。

女性に多いのは特発性(原因不明)の慢性膵炎となり、約5割を占めていますが男性では1割強といったところです。

しかし、女性では必ずしも飲酒量に応じて慢性膵炎を発症するわけでもなく、詳しい原因が明らかになっていません。

このようなことから体質や遺伝・家族性といった要因もあることが考えられています。

飲酒(アルコール)

飲酒習慣は慢性膵炎の発症に深く関連していることが考えられます。

慢性膵炎は男性に多く、これは男性の方が飲酒者・飲酒量がともに多いことが関連しています。

生活習慣

最近の報告では喫煙が慢性膵炎の発症リスクを高めるとされています。飲酒習慣と喫煙習慣の両方を持つ人では、さらに慢性膵炎のリスクが上昇します。

また、ストレスは自律神経系に影響して膵臓や消化管の働きに大きく影響します。

ストレスを受けることで飲酒量や喫煙量が増えることから、慢性膵炎のリスクに繋がることが考えられます。

慢性膵炎の治療

慢性膵炎の診療は「慢性膵炎診療ガイドライン」に沿って行われます。

慢性膵炎はアルコール性非アルコール性とに大きく分けられ、炎症の進行度によって代償期と非代償期とに分けられます。

また、慢性膵炎から急性膵炎を起こしたり、膵臓がんを併発することもあります。

原因や現状によって治療方法が異なりますが、急性膵炎や膵臓がんが確認された場合、その治療が優先されることが多いです。

また、自己免疫性膵炎と閉塞性膵炎は治療によって慢性膵炎とは異なる経過を辿ることがあり、やはり慢性膵炎とは分けて治療が選択されます。

治療内容によって大きく以下のように分かれます。
  • 内科的治療(禁酒を主とした日常生活指導、薬物療法、栄養指導、内視鏡治療、体外衝撃波結石破砕術など)
  • 外科的治療(外科手術、経費ドレナージ術など)
尚、慢性膵炎によって変化した組織が治療によって回復することは困難だと考えられています。

治療期間は年単位におよぶ長期となることが多く、非代償期に関しては生涯付き合う病気となることも少なくありません。

禁酒と日常生活指導

慢性膵炎の原因として最も多いのが飲酒です。アルコール性の慢性膵炎と診断された場合には禁酒が原則となります。

また、喫煙も慢性膵炎を増悪させる要因として考えられており、禁酒と同時に禁煙も行うことが大切になります。

薬物療法

薬物療法の内容はその目的によって分けられます。尚、薬物の選択は慢性膵炎の時期により異なることがあります。

炎症・症状を抑える治療

慢性膵炎では繰り返される心窩部痛(みぞおちの痛み、上腹部の痛み)や背部痛を伴うことがあります。

このため、炎症を抑えるためには消化酵素の働きを抑える蛋白分解酵素阻害薬の処方が検討されます。

また、痛みに対しては消炎鎮痛剤が内服で処方される場合が多くなります。

膵液の不足を補う治療

消化酵素(膵液)の分泌が滞ると食欲不振・腹部膨満感・下痢・脂肪便などの消化不良による症状が起こります。

特に非代償期になると、こちらの症状の方が強くなることが予想されます。

このような場合に膵酵素補充療法が検討され、膵液と同じ働きをして消化吸収を助ける薬の内服治療が多くなります。

血糖値のコントロール

慢性膵炎が進行して特に非代償期になるとインスリン不足によって糖尿病と同じ状態になることがあります(二次性糖尿病・膵性糖尿病)。

このような時には、血糖コントロールの状態に応じて糖尿病に準じた治療を行うのが基本となります。

内視鏡治療

膵管が硬く細くなったりした部分に内視鏡を使ってステントという膵管を拡げる器具を留置する治療(膵管ステント留置術)や、膵管やその入り口を拡げる手術(膵管孔拡張術)などが行われます。

また、膵石がある場合でも内視鏡でステントを留置し、膵石が排出されやすいようにしたり、膵石を取り除く治療(膵石破砕術)をする場合があります。

栄養指導

高脂肪食を摂取すると膵臓が刺激されるため、低脂肪食を心掛けるよう指導があるでしょう。

また、膵性糖尿病を併発した非代償期の慢性膵炎では、糖質の摂取量の管理も必要になります。

膵石の破砕

膵石が大き過ぎるなど内視鏡での膵石の除去が困難な場合には体外衝撃波結石破砕術が行う病院もあります。

衝撃波を皮膚の上から当て、結石を小さくして排出する治療法です。

これは尿管結石で行われている治療で、膵石の破砕に関しては保険適応外で実施している場合があります。

外科手術

硬くなった膵臓組織を切除したり、膵管を拡げたりするための外科的手術が検討されることがあります。

膵液や膵臓に溜まった膿を排出するため、皮膚の上からドレーンという管を挿入する経皮的ドレナージ術などもあります。


慢性膵炎の手術

慢性膵炎で外科的手術が行われることは稀になります。

薬物療法や内視鏡治療などの内科的治療で症状が軽減されたり、経過が安定したりする場合が多い。
  • 慢性膵炎で起こる組織の変化は不可逆的であり、外科的に切除して改善するわけではない(手術を行っても内科的治療の継続は必要)。慢性膵炎は悪性疾患ではないので基本的には切除しなければ悪化するというような病気ではない。
  • 膵臓の手術は部位によっては体への負担が大きな手術となり、合併症のリスクも高い。
  • 膵臓の切除は膵機能不全の後遺症が残る場合もあり、もともと膵臓の機能が落ちている慢性膵炎では実施しにくい。
以上のような理由が挙げられます。

つまり、内科的治療から得られる効果とリスク、それに外科的治療で得られる効果とリスクを天秤にかけると外科的手術に踏み込む必要性が低いということになります。

手術が適応となるケース

  • 内視鏡治療では改善が困難な膵管狭窄がある場合。
  • 内科的治療ではなかなか改善しない腹痛や背部痛といった症状がある場合。
但し、最近の報告では慢性膵炎で変性した膵臓の組織を切除することで、膵がんの発生リスクを減らせるのではという報告もあります。

手術の種類

慢性膵炎に対する手術方法には以下のようなものがあり、急性膵炎後の慢性膵炎で膵嚢胞ができている場合には膵嚢胞切除術が行われることもあります。

膵管減圧術

慢性膵炎では長期間の炎症によって組織が変性し膵管が硬く細くなったり、炎症性の腫瘤(組織が固まったこぶのようなもの)によって膵管が細くなることがあります。

また、膵石によって膵管からの膵液の流出が滞る場合があります。

このような場合、CT検査などで確認すると膵管の膵液が溜まった部分は圧力が上がり、膵管が太く見えます。

一部の慢性膵炎では、この膵管の圧力の高まりによって痛みが起こると考えられています。

このような場合に行われるのが膵管減圧術で、膵管ドレナージ手術と呼ばれることもあります。

膵管減圧術の術式には以下のようなものがあります。
  • Partington手術:膵管を切開して小腸と吻合する手術。
  • Frey手術:細くなった膵頭部をくり抜き、膵管と空腸を吻合する手術。

膵切除術

変性を起こした膵組織を切除する膵切除術が行われることがあります。

膵切除術で期待される効果は、疼痛を軽減させることと、炎症・膵機能低下の進行を防止することです。

膵臓は十二指腸に近い側から頭部・体部・尾部との3つの部分に分けて考えられます。

どの部分どの範囲で切除するかは、病状の進行の程度や現在の膵機能や手術後に期待される膵機能などによって異なります。

膵性糖尿病

糖尿病とは血糖値に異常を来す病気となり、糖尿病にはいくつかの種類があります。

Ⅰ型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が死滅することでインスリンが分泌されなくなり、血糖値の異常をきたします。

Ⅱ型糖尿病は、インスリン分泌量の低下とインスリン抵抗性が高くなることによる糖尿病で、成人の生活習慣病などではこれがほとんどになります。

その他、ステロイド性糖尿病や妊娠糖尿病などもあります。

更に他の病気が原因となって起こるのが二次性糖尿病(続発性糖尿病)で、膵臓病から糖尿病となった場合を膵性糖尿病と呼びます。

なぜ膵性糖尿病が起こるのか

膵臓病の中には、膵臓の組織を変化させてしまう病気があります。膵臓の組織が変化してしまうとランゲルハンス島からのインスリンの分泌が低下してしまいます。

インスリンは、血中の糖分を細胞に吸収させて血糖値を下げるよう働きかけるホルモンです。

インスリンの分泌が低下すると血糖値が上昇したときに対処ができず、血糖値が上がります。

また、同じくランゲルハンス島のα細胞から分泌されているグルカゴンというホルモンは、インスリンとほぼ反対の働きを促すホルモンになります。

通常、グルカゴンとインスリンの分泌のバランスが保たれることで血糖値が適度に保たれています。

このため、膵性糖尿病ではグルカゴンとインスリンの分泌のバランスが崩れることで低血糖な状態になることがあるのです。

膵性糖尿病の原因

膵性糖尿病の原因となるのは、膵臓の細胞を変化させてその機能を障害するような病気が主になります。

慢性膵炎や膵臓がんは、膵臓の組織が変化して機能障害を起こすため、進行することで膵性糖尿病を起こすことがあります。

膵性糖尿病の症状

膵性糖尿病では既に何らかの膵臓病を発症しており、膵臓の機能が低下した状態にあります。

このため糖尿病の症状だけでなく、膵臓病の症状や膵臓の機能低下による症状が伴っている場合が多くなります。

糖尿病の症状には大きく分けると以下のような症状が挙げられます。
  • 高血糖による症状
  • 低血糖による症状
  • 合併症による症状
但し、上記の症状は長期的に糖尿病が進行している場合に出現することが多く、血糖値の多少の変動ではあまり症状がないこともあります。

高血糖による症状

高血糖による症状で典型的だとされているのは「口渇・多飲・多尿」です。

これは顕著な高血糖状態が続くことで血液の浸透圧が上がり、喉の渇きを感じ、水分摂取が増えた結果として尿の量も増えるというものです。このため、血糖値がコントロールされると症状も治まってきます。

さらに血糖値が高くなると糖尿病性昏睡やケトアシドーシスという重篤な状態となり、意識障害を起こすこともあります。

ケトアシドーシスでは、ケトン臭(少し酸っぱいような臭い)やアセトン臭(淡い除光液のような少し甘い臭い)を呼気に感じられることがあります。

これらの高血糖症状は、普段の血糖値の状態や変動の仕方などによって現れ方が全く異なります。

高血糖の状態が続くと細胞に十分な糖分が行き渡らず、栄養障害を起こすため体重減少が起こることもあります。


低血糖による症状

低血糖症状には以下のようなものがあります。下記の項目は下になるほど脳の低血糖状態を示し、重篤なことが言えます。
  • 空腹感
  • 冷や汗、動悸
  • 手の震え
  • 寒気
  • 脱力感
  • 集中できない、頭がぼーっとする
  • めまい
  • 眠気、嗜眠(ぼーっとしたりうとうとしたりと半分寝たような状態)
  • 意識消失、けいれん、昏睡
これらの低血糖症状は、患者によって個人差があります。

合併症による症状

糖尿病による代表的な合併症には以下のようなものがあります。
  • 網膜症:高い血糖によって網膜が障害されて目が見えにくくなります。
  • 腎症:高血糖によって腎臓の糸球体という部分が傷つくことで尿の生成が上手くいかず、たんぱく質が尿に出てしまうなどの状態になります。進行すると腎不全になり透析が必要になります。
  • 神経障害:高血糖によって神経が傷つけられます。障害されるのは末梢の神経から起こることが多く、手足のしびれ・便秘などの症状が現れます。
  • 血管障害:血糖値が高いと血管の内壁が障害されます。このため、高血圧・狭心症・心筋梗塞などの心血管疾患を併発することもあります。

膵臓病による症状

膵性糖尿病では慢性膵炎や膵臓がんが原疾患となり、膵臓状態に応じた症状が伴っていることが多く、以下のような膵機能障害による症状が多く見られます。
  • 食欲不振
  • 軟便・下痢・脂肪便・便秘
  • 腹部膨満感
  • 全身倦怠感
  • 栄養障害・体重減少
膵臓は消化酵素を含む膵液を分泌する機能も持っているため、消化吸収が阻害されることで上記のような症状が起こることが考えられます。

膵性糖尿病の治療

膵性糖尿病とは、何らかの膵臓病が原因となって起こる糖尿病です。

そのため、治療では「糖尿病に対する治療」と「原疾患(膵臓病)に対する治療」とを並行して行うのが基本となります。

糖尿病に対する治療はⅠ型糖尿病やⅡ型糖尿病と同じく、薬物治療による血糖値のコントロールと食事や運動などの日常生活管理とが大きな治療の柱となります。

尚、食事療法については原疾患として膵臓病があるため、そちらも含めて行われます。

薬物療法

急激な血糖値の変化については薬物を用いてコントロールするのが基本です。

高血糖のコントロールに用いられるのは、インスリン血糖降下薬になります。

インスリンは、注射で用いる薬で如実な血糖降下作用の効果が期待できます。

インスリンには、即効型や長期作用型など効き方によって様々な種類があり、その方の血糖値の変動に応じて処方されます。

定期的な血糖測定を行って、その時の血糖値に応じて注射を行うのが通例なので、血糖値の変動が激しい時期に対処しやすいのがインスリン療法です。

血糖降下薬は、内服で処方されて血糖値を下げる薬を指します。

血糖降下薬は、インスリンと比べると用量で効果を調節するのが難しいため、ある程度血糖値が安定した方に処方されることが多いです。

また、適切な時間に確実内服を行なうため、内服の自己管理も大切になります。

尚、低血糖が続く場合にはブドウ糖の摂取でその都度対処が検討されます。

食事療法・日常生活管理

患者さんの血糖値に応じて一日の摂取カロリーを決め、それを守るようにします。

また、運動が可能な場合には、適度な運動習慣を身に着けることも大事です。

禁酒はほぼ必須と言えます。

アルコールは血糖値の急激な上昇を招く上、膵臓が刺激を受けて膵性糖尿病の原因疾患となっている慢性膵炎の悪化を招くためです。

慢性膵炎を増悪させる要因として喫煙(タバコ)が挙げられます。

喫煙は糖尿病の合併症である血管障害や、心血管疾患(高血圧や狭心症)のリスク要因でもあることから禁煙が推奨されています。

膵臓病に対する治療

膵性糖尿病の原因疾患となるのは、主に慢性膵炎や膵がんです。

慢性膵炎や膵臓がんでは、膵臓の組織変化から膵機能障害を起こし、インスリンなどの分泌が障害されるからです。

慢性膵炎や膵臓がんといった原因疾患の治療は、各治療ガイドラインに基づいて行われ、膵性糖尿病の治療と併行して行われます。


自己免疫性膵炎

高齢男性に多い

自己免疫性膵炎とは、自己免疫によって膵臓が炎症を起こして膵臓が腫れたり、組織が変化して硬くなったりする病気を指します。

自己免疫性膵炎では、膵臓が腫れることで膵管の流れが悪くなり、黄疸を起こして見つかることが多いのですが、かつては膵臓がんと間違われて外科手術が行われることもあった病気です。

この自己免疫性膵炎は、ゆっくりと数か月~数年単位で慢性的に進行する場合が多く、慢性膵炎とも鑑別が必要な病気ですが、治癒過程が異なることから慢性膵炎とは分けて着目されるようになりました。

また、自己免疫性膵炎という個別の病気として日本からその概念が提唱されたのは1995年と比較的に最近のことです。

日本人の自己免疫性膵炎による推定年間受療者数は、800~900人(2002年と2006年の調査)とされており、日本人では高齢の男性に有病者が多いとされています。

なぜ自己免疫性膵炎は起こる

免疫とは、病原菌など外敵に対して対抗するための体の防御反応になります。

この免疫に何らかの変調を起きると本来は攻撃されることのない自分の組織を攻撃してしまうことがあります。

これを自己免疫と呼び、自己免疫によって起こる病気を自己免疫疾患と呼びます。

自己免疫性膵炎では、免疫に関わっているガンマグロブリン・IgG・IgG4といった物質が、血液検査で異常な高値を示すのが一つの特徴的な検査所見として確認されることが言えます。

異常に増えたこれらの免疫物質によって膵臓の組織やその周辺の組織が炎症を起こすのが自己免疫膵炎だと考えられています。

尚、自己免疫性膵炎にはIgG4による1型と好中球増殖病変による2型とがあり、日本ではほとんどが1型になり、国内で一般的に「自己免疫性膵炎」と呼ぶ時のは1型を指していることが多くなります。

この1型の(IgG4による)自己免疫性膵炎は「IgG4関連疾患」に含まれ、厚生労働省によって免疫系疾患分野の難病に指定されています。

しかし、免疫系の異常によって起こる病気だということはわかっていますが、なぜ自己免疫を起こしてしまうのか原因は不明とされています。

IgG4関連疾患には、膵臓や腎臓・肝臓・胆管・肺・神経・甲状腺・前立腺・乳房・唾液腺・涙腺などといった複数の臓器に発症して、全身性の症状を起こす場合と単一臓器に発症する自己免疫性膵炎のような場合とがあります。

日本発信の新しい病気

IgG4関連疾患や自己免疫性膵炎は日本から提唱された病気とされており、共に新しく知られ国際的にも認知度が上がっています。

また、個別の疾患として認識されたことから、自己免疫性膵炎として発覚した患者数も増えています。

日本ではいち早く2009年に厚生労働省難治性膵疾患調査研究班と日本膵臓学会が診療ガイドラインを作成して診療にあたっています。

自己免疫性膵炎の症状

自己免疫性膵炎以外の膵臓病においても、症状に乏しいことは少なくありません。

膵臓は上腹部の奥に位置している上、特徴的な症状を起こしにくく、初期段階や軽症の場合には症状に気づきにくいことが多くあります。

その中でも自己免疫性膵炎で起こりやすい症状には以下のようなものが考えられます。
  • 痛み(上腹部痛、背部痛)、体のだるさ:膵臓の炎症による痛みや全身のしんどさ
  • 胃や腹部の不快感、食欲不振、消化吸収不良:炎症によって膵臓の組織が変化することによって膵液(消化液)の分泌が悪くなり起こる症状
  • 体重減少:長期の消化吸収不良などによって起こる
  • 糖尿病の症状(口渇など):膵臓からのインスリン分泌の不調から糖尿病となり、症状が出現する
  • 黄疸:炎症で腫れた膵臓の組織によって膵管が圧迫され、胆汁の流れが滞って黄疸が起こる
上記の症状の中でも黄疸で病気が判明したという人が患者の過半数にもなります。

しかし、黄疸で自己免疫性膵炎と判明時は、既に進行した状態のケースが多いです。

また、自己免疫性膵炎の合併症である硬化性胆管炎でも黄疸が起きますので、既に合併症を起こした状態で見つかることも少なくありません。

自己免疫性膵炎のうちIgG4に関連して起こる1型はIgG4関連疾患の中の一つです。

IgG4関連疾患は、複数の臓器に炎症を起こす場合があり、膵臓の症状よりも他の臓器で起きた合併症の症状によって発見されることもあります。

膵臓と同時にIgG4関連疾患を発症する恐れのある臓器は、腎臓・肝臓・胆管・後腹膜・肺・神経系・甲状腺・前立腺・涙腺・唾液腺・乳腺など多岐に渡ります。

2型の自己免疫性膵炎は1型とは異なった起こり方となり、こちらは急性膵炎を起こすこともありますが日本人には稀な病気となります。

自己免疫性膵炎の治療・予後

自己免疫性膵炎診療ガイドライン

日本では2009年に自己免疫性膵炎診療ガイドラインが作成されており、以降は順次更新されています。

日本での自己免疫性膵炎の治療はこのガイドラインに則って行われ治療適応も決められています。

治療適応であるかどうかの判断は、まずは「自己免疫性」膵炎であるかどうかの診断に委ねられるとが言えます。

自己免疫性膵炎と他の膵臓病、例えば慢性膵炎や膵臓がんとでは治療方法が異なるためで、自己免疫性膵炎では膵臓がんとの合併例も見られるからです。

自己免疫性膵炎の治療

自己免疫性膵炎と診断されると最初にステロイドを使った治療が多くなります。

しかし、診断がはっきりしない場合や膵臓がんとの合併例で、は外科的切除が検討されます。

症状が著名な場合には対症療法が検討されます。

ステロイド療法

自己免疫性膵炎と診断されると第一に選択されるのがステロイド療法です。

ステロイドとは、副腎皮質ステロイド薬を指します。

また、自己免疫性膵炎で用いられる薬物ではプレドニゾロンが多く、体重によりますが概ね1日30mg程度から一般的に開始されるとされています。

このステロイド薬は副作用が予測される薬でもあります。

黄疸や糖尿病といった自己免疫性膵炎の症状や状態を見ながら、徐々にステロイド薬の減量が検討されます。

外科手術

自己免疫性膵炎の確定診断が困難時や症状が重い場合、さらには膵臓がんや胆管がんを合併している時には手術になることがあります。

手術では炎症が進行した部位、限局した腫瘤を含む部位の切除します。

但し、膵臓の外科手術は、急性膵炎や膵液ろう等といった合併症の危険性があり大きな手術となるため、手術そのものに耐えうる体力があることが適応条件となります。

対症療法

対症療法を必要とするケースは主には黄疸や糖尿病があります。

黄疸では場合によってはドレナージ(狭くなった膵管にドレーンという管を挿入して胆汁の排泄を促す方法)が、糖尿病では血糖測定やインスリン治療などが行われることがあります。

自己免疫性膵炎の予後

自己免疫性膵炎では、ステロイド療法への反応が良く、7~8割の患者さんで治療効果が早期に現れるという報告があります。

但し、ステロイド薬を中止すると再発が3割程度に見られるため、再発率が高い病気であることから少量で治療を継続している(維持療法)場合が多くなります。

自己免疫性膵炎は1995年に日本で提唱され、ここ数年でようやく国際的にも認知された病気です。

このため、治療研究にも日が浅く、治療後の予後、とくに長期的な予後についての統計や研究結果などは出ていません。


自己免疫性膵炎の検査・診断

自己免疫性膵炎の診断

自己免疫性膵炎は比較的新しい病気であり、この概念が提唱される以前や定着するまでは膵臓がんや慢性膵炎と診断されていることもありました。

日本においては適切な診療をするため、2009年に自己免疫性膵炎診療ガイドラインが作成されています。

自己免疫性膵炎の診療のために行われる検査には以下のようなものがあります。
  • 画像検査
  • 血液検査
  • 病理組織検査(生検)

画像検査

膵臓病を疑って初期に行われる検査として画像検査があります。

検査では、CT検査・MRI検査・超音波検査・超音波内視鏡検査などがあり、それぞれの検査の特性を活かし、膵臓が炎症や腫れ具合を確認していきます。

自己免疫性膵炎ではソーセージのように膵臓がびまん性の腫れることが特徴的な画像所見とされています。

また、膵臓の周りに被膜のような構造ができること膵管の内腔が不整に凸凹して細くなることがあるのも特徴的な所見です。

しかし、画像検査だけでは確定診断はできません。診断には血液検査や病理組織検査が必要となります。

血液検査

自己免疫性膵炎においての特徴的な所見は、IgG4・IgG・ガンマグロブリン・自己抗体などの異常な高値です。

これらは物質は免疫による物質ですので上昇していれば自己免疫性疾患であることが確定的になります。

また、膵酵素系や胆道系酵素・ビリルビンの上昇は膵臓疾患の目安となる項目です。

免疫物質の上昇と合わせて自己免疫性膵炎の診断の要素となります。

病理組織検査(生検)

膵臓の組織や細胞を採取し、顕微鏡にて病気を診断する検査です。最終的にこの病理組織検査によって確定診断が行われます。

膵臓の組織を採取するにはEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引)が行われます。

これは内視鏡を使って膵管まで超音波プローブを挿入し、病変組織をプローブに取り付けた器具で細胞を採取する方法です。

胆石性膵炎

胆石によって膵管が閉塞することで起こる膵炎を胆石性膵炎と呼びます。胆石が原因とされる膵炎はアルコール性膵炎に次いで多くなります。

胆石症は中高年以上の女性に多く、男女とも高齢になると増える病気です。このため、胆石性膵炎は女性の膵炎の代表的なものとなり、高齢者の膵炎でも多くみられます。

胆石性膵炎の主な症状

胆石性膵炎の主な症状には以下のようなものがあります。

腹痛・背部痛

胆のうの位置は、みぞおちの右側奥、膵臓はみぞおち(心窩部)の中央から左側の奥に位置するため、その近辺に痛みを感じることが多くなります。

また、背部痛として感じたり、肩に抜けるような放散痛を感じることもあります。

胆石発作を起こした場合、吐き気や嘔吐を伴うような激痛になることや繰り返す痛み、とくに食後に痛むことが多いです。

胆石や膵炎の初期や胆石が小さい場合、痛みが軽度な時や伴わないこともあります。

吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐は、膵炎でも胆石症でもよく見られる症状です。痛みを伴う吐き気・嘔吐や吐いても収まらない強い吐き気が起こることがあります。

発熱・悪寒

炎症から感染を起こすと38度を超すような高熱や悪寒・震えを伴って周期的に繰り返す高熱がみられることがあります。

黄疸

胆石による胆管の閉塞が続くと胆汁が十二指腸に分泌されなくなり、胆汁に含まれるビリルビンが血中に移行して皮膚や白目部分が黄色く変色します。これが黄疸です。

その他の症状

急性膵炎を起こした場合、重症化すると血圧低下・意識混濁・尿量減少・呼吸不全などのショック症状が見られることがあります。

また、高齢者や初期・軽症の場合、逆に症状が顕著でないこともしばしばあります。


胆石性膵炎の治療

胆石性の急性膵炎と診断された場合、他の急性膵炎と同様に治療が行われます。急性膵炎には入院治療が必須とされ、全身管理や集中治療が必要になります。

全身状態の継続的な観察・絶食による膵臓の安静・大量の点滴による循環血液量の維持と、サイトカインの排出・痛みや症状の軽減・膵酵素阻害剤の投与・感染症の予防などが行われます。

胆石性膵炎に特徴的な治療としては胆石を排出し、膵管の閉塞を解除するというものがあります。

胆石を排出では主に内視鏡で行われます。下記に別に挙げていきます。

胆石性膵炎の内視鏡治療

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)という検査で内視鏡を使い、膵管や胆管を造影して胆石の有無や大きさ・位置などを確認します。

胆石がそのままでは排泄されにくい場合、以下のような内視鏡治療が行われることがあります。
  • EST(内視鏡的乳頭括約筋切開術):内視鏡下で十二指腸乳頭を切開して胆石を排泄しやすくする。
  • EPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術):内視鏡下で十二指腸乳頭を風船で拡げて胆石を排泄しやすくする。
  • 胆管ステント留置術:内視鏡を使って胆管を内側から拡げるステントを入れる。

外科的治療

胆のうに大きな胆石や複数個の胆石が見られる場合、胆のう切除術が行われます。

全身状態や重症度によって腹腔鏡手術で行われる場合と開腹手術で行われる場合があります。

胆石性膵炎の予後

胆石症も膵炎もそれ自体は良性疾患ですが、重症例の急性膵炎においては致命率が数パーセントにも上り、侮れない病気だと言えます。

また、胆石症を繰り返す場合、胆石性膵炎も再発する可能性が高くなります。

このため、胆石症や胆石性膵炎の再発予防としても胆のう摘出術がよく行われています。


参考文献等

  • 広島記念病院「慢性膵炎」
    広島県広島市中区本川町1‐4‐3
    https://www.kkrhiroshimakinen-hp.org/archives/shinryouka_data/2544
  • 一般社団法人日本肝胆膵外科学会「急性膵炎と慢性膵炎」
    新宿区住吉町1-15
    http://www.jshbps.jp/modules/public/index.php?content_id=17
  • 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト「急性膵炎」
    東京都新宿区信濃町35
    http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000780.html
    「自己免疫性膵炎」
    http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000787.html

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