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認知症

認知症とは

認知症とは、脳の後天的(生まれつきではない)な障害によって日常生活に支障をきたす症状を指します。

昔は痴呆症(ちほうしょう)とも呼ばれていましたが、差別用語的であるということから2004年に厚生省が「認知症」という言葉を使うようになりました。

認知症の代表的なものには脳血管性認知症アルツハイマー型認知症があり、その他にも交通事故による脳の損傷や脳の病気などがあります。

共通する症状として病的な「もの忘れ」や「夜間のせん妄」、「盗難妄想」、「異食」などです。但し、加齢に伴なうもの忘れと認知症は異なります。

もの忘れというのは体験の一部を忘れてしまうことに対して、認知症の場合では体験の全てを忘れてしまいます。

例えば、「昨日の夜ご飯は何を食べましたか?」と質問すると、もの忘れの場合「何を食べたか忘れました」に対し、認知症の場合では「ご飯食べたかどうか忘れました」という感じです。

大きな違いはもの忘れは日常生活にほぼ支障はないが、認知症では日常生活に支障があるという点です。

しかし、認知症の初期段階でみられる記憶障害と加齢による記憶障害の区別は難しく、早期の段階では気付かずに初期症状を過ぎているというケースも少なくありません。

急増する認知症の患者数

厚生労働省の国内の将来推計によれば、今後も認知症を有する高齢者が増加し続けることが予測され、2020年(平成32年)には292万人に達すると言われています。

さらに65歳以上人口の8.9%、85歳以上では30%近くに加齢とともに患者数が増加することが予測されています。

この数字からもわかるように認知症は自身や家族にも発症する可能性のあり、他人事ではありません。

「うちの親に限って….」「あの人に限って….」などという考えは捨てて、少しでも様子がおかしければ専門医を受診することを勧めるなど、家族や周りの人間が初期症状に気づいてあげることが大切なのです。


認知症の原因

認知症の原因については未解明な部分は多々ありますが、少なくとも喫煙・飲酒・高血圧・運動不足・食生活などの生活習慣が深く関わってくることが考えられています。

予防という点では、今一度、生活習慣を見直してできる限り改善し、生活していくことが大切と言えるでしょう。

認知症には色々な種類があり、その原因様々となり代表的なものを下記にあげてみました。

アルツハイマー型認知症(認知症患者の約50%)

アルツハイマー型認知症を発症する原因については現在のところ未解明ですが、遺伝、環境、生活習慣などの複数の因子が絡み合わさって発症すると考えられています。

一つだけわかっていることは高齢者・女性に多く発症するということです。

現在のところ、アミロイドβたんぱくという物質が蓄積した結果、老人斑が増加し、脳神経の働きに影響を及ぼすことによって発症するという見解が最も有力な説と言われています。

また、食事の改善、適量の飲酒、運動習慣、趣味、1日30分以内の昼寝などで、アルツハイマー型認知症の予防や進行を遅らせることが可能があると言われています。

血管性認知症(認知症患者の約30%)

血管性認知症を引き起こす原因の大部分が脳梗塞になります。

脳出血でも認知症を発症することがあり、脳卒中を繰り返していると、その度に悪化されると言われています。

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが原因となっていることから、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が深く関与しています。

生活習慣病は過食を防ぎ、塩分を控え、バランスの良い食生活、習慣化されたウォーキングや体操などの適度な運動、そして休息をとることで予防が可能になります。

レビー小体型認知症・その他の認知症(認知症患者の約20%)

レビー小体型認知症の原因は多数のレビー小体とレビー関連神経突起の出現、それによる神経細胞の脱落ですが、レビー小体の本体は未だ不明とされて

認知症の種類

認知症には色々な種類があり、その原因や症状も種類によって様々です。認知症は3つに大きく分かれ、さらに細かく分類されていきます。

下記に種類・症状などをまとめましたので見ていきましょう。

神経変性疾患

アルツハイマー型認知症

最も一般的な認知症で発症は高齢者と女性に多い。
症状:もの忘れ、失語、失認、失行など。
特徴:治療により症状の進行を抑制可能だが、完治することはない。
危険因子の一つに遺伝がある。

非アルツハイマー型認知症

  1. レビー小体型認知症
    3大認知症の一つである。
    症状:幻視、パーキンソン症状など。
    特徴:抗精神病薬に対しては少量でも過敏性があり、副作用が出やすい。
  2. 前頭側頭型認知症
    脳の前方部に原発性の変性を有する非アルツハイマー型の変性認知症。
    症状:多幸、脱制御、さまざまな行動異常など。
    代表的な疾患にはピック病がある。ピック病は食行動異常、衝動性、常同行為などの行動異常と健忘失語・語義失語がある。人格が変わることが多く、若年で発症する場合が多い。
  3. 進行性核上性まひ
    症状:認知機能障害、人格変化、構音障害を主とする仮性球まひ症状、パーキンソン症状など。
    特徴:皮質下や脳幹の神経核に特有の変性がある。
  4. 皮質基底核変性症
    症状:手の複雑で持続的な不随意運動、構成失行、眼球運動障害など。
    特徴:頭頂葉の委縮と脳室の拡大を認めるが、左右差が著しい。
  5. ハンチントン病
    症状:緩徐進行性の舞踏運動、人格変化、精神症状など。
    特徴:常染色体優性遺伝式の進行性の疾患で認知症を伴う割合は70~80%。
  6. パーキンソン病による認知症
    症状:無動、筋強剛、振戦を3主特徴とする運動障害。
    特徴:認知機能障害や抑うつなどの精神症状を伴うが80歳以上になると70%に認知症が出現する。

脳血管障害

  • 血管性認知症
    原因の大部分が脳梗塞だが、脳出血でも認知症を呈することがある。
    発症は60歳以降と男性に多い。
    症状:まだら認知症、運動まひ、歩行障害など。
    特徴:急に発症し、段階状に悪化する。

その他の原因疾患

  • 内分泌・代謝性・中毒性疾患
    甲状腺機能低下症、アルコール脳症、低酸素症など。
  • 感染症疾患
    HIV脳症、クロイツフェルト・ヤコブ病など。
  • 腫瘍性疾患
  • 外傷性疾患
  • その他
    正常圧水頭症、多発性硬化症など。
以上のように、認知症には沢山の原因や種類があります。なかには外科的な手術や内科的な治療によって改善が期待できるものもあります。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症とは最も一般的な認知症の一つです。記憶障害から新しい情報がインプットできなくなり、直前の出来事もすぐに忘れてしまう脳の病気です。

日時や季節の感覚が曖昧となり、電車に乗っていて目的地を忘れたり、今どこにいるのかがわからなくなります。

同じものを何度も買いこんだり、料理の手順がわからなくなったりもします。

さらには言葉がスムーズに出ない、衣服をきちんと着られない、住み慣れた土地でも道に迷ったりもします。

現在のところ、アルツハイマー型認知症の原因は解明されていません

原因究明が精力的に行われているものの、アルツハイマー型認知症そのものの異種性から将来に渡っても単一の原因が見つかることは疑問視されています。

症状・検査

脳所見の特徴は神経原線維変化と老人斑、そして大量の神経線維の脱落です。

脳の画像検査ではCT・MRIが実施され、海馬領域と側頭頭頂葉を含む大脳後方連合野に変性がみられます。

しかし、初期症状では脳委縮がみられないことがあり、もの忘れよりも不安や抑うつなどの症状が目立つこともあって認知症の発見が遅れることがあります。

病状の経過進行は、初期・中期・末期の3期に分けられます。
  • 初期では海馬病変に対して記憶障害が現れます。
  • 中期には側頭頭頂葉病変に対して失語、失行、失認がみられます。
  • 末期では広範な大脳皮質病変に対して人格変化がみられ、寝たきりになります。
上記以外では意識の消失を伴う頭部外傷を繰り返した人にアルツハイマー型認知症が多く、ボクサー認知症とも呼ばれています。

他にもうつ病を繰り返しているうちに、いつの間にかアルツハイマー型認知症を発病している人も少なくありません。

アルツハイマー型認知症の特徴のまとめは以下の通りです。
  • 年齢:中年から高齢まで
  • 性別:女性に多い
  • 発症と経過:ゆるやかに発症し、徐々に進行する
  • おもな症状:全般性認知症、失語、失行、失認
  • 感情面その他:多弁、多幸、徘徊
  • もの忘れの自覚:早期に消失する
  • CT/MRI:海馬の変性
  • SPECT/PET:側頭頭頂葉の血流代謝の低下
早期発見し、適切な治療が行われた場合には進行を遅らせることが可能です。家族や周りの人は当人の少しの変化に気づき、早期受診することを勧めることが大切な役割となってくるでしょう。

若年性認知症

認知症は高齢の方ばかりに発症する病気とは限りません。特に18歳~65歳で認知症が発症した場合は若年性認知症と呼ばれます。

若年性認知症の発症ピークは50代ですが、ピック病などの場合には早ければ20代でも発症するケースがあります。

発症の男女比率は働き盛りの男性に多くみられます。仕事への影響から退職後、さらに経済的に追い込まれ、精神的な原因から発症することもあります。

女性の場合、異変があっても更年期障害と間違われることが多く、症状が進行するまで気付かないケースが少なくありません。

若年性認知症の原因として下記のようなものが考えられています。
  1. 脳血管疾患(約40%)
    原因:脳梗塞、脳出血
    治療:外科手術、薬物・運動療法によって症状がほとんど改善する。
  2. アルツハイマー病(約25%)
    原因:アミロイドの蓄積・遺伝など
    治療:早期発見し、リハビリに努めれば回復の可能性もある。
  3. 頭部外傷(約8%)
    原因:交通事故など
  4. その他(約27%)
    原因:ピック病、アルコールの過剰な摂取など
    治療:原因によって様々だが、ピック病については現在のところ有効な治療手段がない。

症状・予防

若年性認知症の初期症状は高齢者の認知症とあまり大差なく、もの忘れや行動の変化が現れてきます。

若年者の場合、進行が早く発見が遅れると重度化することが多く、高齢者よりも体力があるので介護する側もとても大変になります。

若年性認知症の治療では何よりも早期発見することが一番です。原因によっては治せるケースや進行を遅らせることも可能です。

そのため、少しでもおかしいと思ったらすぐに認知症の専門医に相談することが早期発見・早期治療の近道とも言えます。

若年性認知症の予防には、適度な運動習慣を身につける、栄養バランスの良い食事と、よく噛んで食べるなどの食生活の改善、喫煙、夜更かし、過度の飲酒などといった生活習慣を見直すことが大切です。

規則正しい生活を送ることと趣味や自分の好きなことなど「人生の楽しみ」を見つけ、脳を活性化させることが予防のポイントになります。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症とは、アルツハイマー型認知症、血管性認知症と共に3大認知症と言われ、レビー小体型認知症は75歳~80歳くらいの高齢者に多く発症し、女性より男性の方が多いのが特徴です。

症状としては意識があるのにも関わらず認知機能の変動が著しく、周囲の状況などに対する認識や理解力が良い時と悪い時との差が目立つのが特徴です。

また、具体性を帯びた人物や小動物の幻視が活発に現れ、その幻視の出現率は認知症の人の中でも最高となる30%といわれ、とくに中等度の認知症に多く現れるようです。

一般に認知症の人の幻想であれば時間が経つと忘れてしまうのですがレビー小体型の幻視ではその内容をよく覚えているのが特徴です。

また、パーキンソン病の症状が現れることがあります。体や表情が硬くなる、手が震える、前傾姿勢になる、小刻み歩行になるなどいくつかの運動症状が出現するなどの症状がみられます。

検査・治療

検査では、CT、MRIなどの画像検査が行われますがアルツハイマー型認知症ほどに脳の委縮は目立ちません。

脳所見は多数のレビー小体とレビー関連神経突起の出現、それによる神経細胞の脱落ですがレビー小体の本体は未だ不明となっています。

レビー小体型認知症は症状の特性から違う病気と誤診されることが多く、かなり悪化してから発見されるケースも少なくありません。

薬物に関してはアルツハイマー型認知症の進行を抑制する効果があるアリセプトが、レビー小体型認知症にも使われることがあります。

また、抗精神病薬に対しては少量でも過敏性があり、副作用が出やすいことから薬の調整が難しい病気とも言えます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症はピック病とも呼ばれ、最初にこの病気を報告したのがアーノルド・ピックという医師だったことから由来しています。

神経細胞が徐々に減っていき、大脳の前頭葉と側頭葉前方の委縮が目立ち様々な神経や精神障害が現れます。

この前頭側頭型認知症になる原因ははっきりとは解っていません。

前頭側頭型認知症にはいくつかのタイプがあり、ピック球という異常構造物質が神経細胞の中に溜まるタイプと最近わかったものではTDP-43という蛋白がたまるタイプがあります。

人格、性格が極端に変わるという症状が初期からみられ、アルツハイマー型でみられるような記憶障害が目立たないという特徴があります。

症状

  • 自分や社会に対する関心が低下し、容姿や服装に無頓着になったり、万引きのような軽犯罪を起こすことがある。
  • 抑制の欠如により、遠慮がなくなったり、暴力行為やふざけ、落ち着きのなさがみられる。
  • 常同的行為(同じ道を歩き続ける、同じものを食べ続ける、同じ動作を続ける等)がみられる。
  • 感情面では自発性がなくなり、感情の感覚が鈍くなり、他人に共感や感情移入ができなくなる。
  • こだわりが異常に強くなり、柔軟な対応ができず、好き勝手な行動をする。
  • 興奮状態があったり、多幸的になる。
  • 自発的発語が減少し、いつも同じことを言い続けるというような言語障害がみられる。
病気が進行してくると全身の筋肉が硬くなっていき寝たきりとなり、食べ物の呑み込みも悪くなります。

発病後の寿命は平均6年と言われ、10年以内に衰弱死することが多く、アルツハイマー型の平均寿命と比べると若干短い傾向にあります。現在は有効な治療方法がなく治療は介護が中心となってきます。

対処療法としては抗精神病薬を使うこともありますが場合によっては入院を余儀なくされます。


脳血管性認知症

脳血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などで脳血管障害を起こした箇所の後遺症となる認知症を指します。

認知症の中でもアルツハイマー型に次いで多い認知症になります。脳血管性認知症はアルツハイマー型の認知症に比べ、病気の進行具合や症状が異なるので、その治療法や生活上での注意点も変わってきます。

脳血管性認知症の原因として一番多いのは多発性ラクナ梗塞(小さい脳梗塞が多発する疾患)で、小さい脳梗塞が多発すると徐々に脳の機能が低下していき認知症になります。

多発性ラクナ梗塞の基礎疾患として、糖尿病や高脂血症、高血圧などの生活習慣病がありますので、食生活などの見直しが予防に繋がります。

症状としては脳の壊死部分によって異なりますが、めまいや痺れ、言語障害、知的能力の低下と様々で、記憶力が低下しているのに理解力や判断力、人格はしっかりと保たれているといったまだら認知症の症状がみられるのが特徴です。

また、脳血流の循環不全を伴うことから症状が日中及び夜間では全く変わってきます。

治療・予防

現在、脳血管性認知症そのものを改善させる方法はありません。

よって脳血管性認知症の治療は脳血管障害の再発予防と認知症の症状に合わせての対処療法が中心となります。

脳血管障害の原因ともいわれる、高血圧、糖尿病、高脂血症や心疾患などをコントロールすると同時に脳梗塞の再発を予防するために薬物を服用することが多くあります。

生活習慣病にならないことが治療に繋がるため、食生活の見直し、禁酒・禁煙を心がける、適度な運動を生活に取り入れる、またストレスをためないことが予防のポイントです。

リハビリテーションやレクリエーションといった非薬物療法が認知症の症状やQOL(生活の質)の改善に有効だと言われています。

認知症の症状

認知症の初期症状では新しいことが覚えられなくなるという症状から始まり、身体的にも認知する機能がどんどん低下し、徐々に歩行が困難となり、転倒して骨折するなど最終的には寝たきりとなることが多いです。

認知症の具体的な症状として下記のような症状が考えられます。
  • たった今、電話をしてた内容が思い出せない。
  • 電車に乗っていて目的地を忘れる。
  • 日付や時間、曜日の感覚が曖昧になり、人と会う約束や日時を忘れるようになる。
  • 方向感覚が鈍くなる。
  • 見慣れている道を運転中に迷う。
  • 運転中、車線の変更がうまくできなくなくなる。
  • 料理の手順を忘れる。
  • 意欲の低下・今まで好きだった趣味に興味が湧かなくなる
  • 出不精になったりする。
  • ネクタイが結べない・衣服を前後逆に着たりする。
  • 同じものを何度も買い込む。
  • おどおどした自信のない態度が目立つようになる。
  • 普通に食事をしていても体重が減少する
認知症の症状が重度になってくると意思の疎通をとることが難しくなっていきます。

悪化させる要因には身体的要因・精神的要因・環境的要因の3つがあります。こうした要因を可能な限り減らす工夫が求められてきます。

認知症の徘徊

認知症の症状でよく知られているのが徘徊です。徘徊と言っても、その特徴は患者さんの身体状況によって異なってきます。

一般的な認知症の徘徊では見知らぬ場所で道に迷って帰れなくなり、徘徊して行方不明になると離れた場所で保護されるケースがあります。

空間認知障害では、方向、距離、位置が把握できなくなり、家の近所で迷ったり、家の中でトイレの場所が分からなくなるような事が起こります。

前頭側頭型認知症の方は、本人が決めた特定のルートを毎日散歩するという行動があります。道に迷うことは少ないですが、欲しいものを街中で見掛けるとお金を払わずに盗ってくるという行動があり、問題になっています。

また、差し迫った必要を感じて目的地に向かって歩く徘徊があります。「会社に早く行かなければ」とか「夕ご飯の準備に間に合わない」等、強い理由があるため、止めようとすると興奮する場合があります。

反対に目的が良く分らずにソワソワして歩いていく徘徊もあります。用事を思い立ったものの歩いているうちに忘れてしまい、落ち着かない気分でじっとしていられない様子です。

他には幻覚を見たり、強い不安に襲われる(せん妄)ことによる徘徊、今いる場所が退屈だったり、気まずかったりして外出するケースもあるようです。

徘徊の対処について

徘徊の対処法としては患者さんの服装を明るめにさせることで車などから目立つようにすることです。

また、地域の警察や近所にも見かけたら声をかけてもらうように協力を求めておくのも良いでしょう。

最近では洋服に小さいGPS器具を縫いつけたり、玄関やドアに検知する音のでる器具やセンサーを取り付けたりするのも一つの方法です。

現在、介護施設などでは徘徊通知システムを導入しているところが多数あります。

認知症と介護

認知症患者の介護で一番大切なことはまず認知症という病気をよく知る事です。

とくに家族や身内が認知症を発症した場合、それがなかなか受け入れられず「人が変わってしまった」「こんな事すらできなくなってしまった」などネガティブな発想になってしまいがちです。

認知症は家族でさえも理解が難しい病気とされ、患者さんの症状が重症になるにつれ、介護も大変になってくるものです。

そのため「脳の病気」だと認識して患者さんへの対処を勉強していく必要があります。

とくに「怒る」「否定」という行為は介護が難しくなるだけだと言われます。

患者さんが不安や混乱を感じるような介護は避けて、施設でもそうですが介護をする人間がみんな同じ対応ができるようにする事が望ましいです。

介護疲れから介護する方が鬱になったりするケースもあるようなので1人で抱え込まない事が大切です。

介護保険制度の利用

平成12年4月より介護保険制度が利用できるようになりました。

一昔前までは老人ホームなどの介護施設に親を預ける行為が後ろめたいというイメージがありましたが、現在では介護保険制度を利用する事で近所で負担が少ない介護施設でのケアが可能になりました。

介護保険制度を利用するには介護認定を受けなければなりません。申請はケアマネージャー、かかりつけ医、介護保険事業者で代行もしてもらえます。

認知症を介護する側はケアマネージャーや市や県の相談室、インターネットでの集いなどを最大限利用して介護の負担をなるべく減らし、一人で背負い込まないことが大切です。


認知症の薬物療法

認知症の薬物療法では症状があっても直ぐに治療を開始するのではなく、その症状がもたらす患者さんや家族への不利益がまず考慮されるべきです。

現在、認知症で処方されている薬物は症状や種類によって様々で4種類の薬物があり下記の通りとなります。
  • 塩酸ドネペジル(アリセプト)
    軽度~中等度のアルツハイマー型認知症における認知機能障害の進行を抑制します。
  • ガランタミン臭化水素酸塩(レミニール)
    軽~中等度の適応でアリセプトと同じメカニズムで症状の改善をします。
  • メマンチン塩酸塩(メマリー)
    アリセプトとは異なる作用のメカリズムを持ち世界では70カ国で中等~高度のアルツハイマー型認知症患者に使用されています。
  • リバスチグミン(イクセロン/リバスタッチパッチ)
    アリセプトとほぼ同じメカニズムで認知機能障害の進行を抑制します。
大きな特徴は貼り薬ということです。錠剤を飲み込むことが難しい患者でも使いやすいとされています。

血管性認知症に関しては中核症状への効果が確認されている薬物は現在のところありません。

臨床の現場では意欲低下に対しては、ニセルゴリン(サアミオン)や塩酸アマンタジン(シンメトレル)、せん妄や興奮に対しては、塩酸チアプリド(グラマリール)、めまいに対しては、酒石酸イフェンプロジル(セロクラール)などが対症療法として使用されることがあります。

薬の副作用について

認知症の症状が本人や家族にとって重大なものでなければ、副作用の危険をおかしてまで薬物治療を行う必要はないかもしれません。

認知症の薬の副作用と間違われるのが、他の病気の薬が患者さんの行動や心理症状に悪影響をもたらしているケースがあり、そのような時には原因とされる病気の治療や薬物療法の見直しが必要になります。

その他、生活環境の調整によって状態が改善することもあります。そのため、認知症の薬物療法は日常の生活環境を変えるなどの治療を実施してから、それでも改善がみられない時に行われるべきという考えもあります。

認知症の予防

以前までは「認知症は絶対に予防できない….」「認知症は進行性なので良くなることはない….」という考え方が一般的でした。

しかし、近年の調査・研究によって認知症の予防や進行を制御する方法についての知見が得られています。

注目すべき点は生活習慣などの後天的な要因との関係を示す結果が多く報告されはじめていることです。

認知症の予防として一番効果的なのは、家族や友達、ペットなど毎日のコミュニケーションです。それが難しい場合には趣味を持ったりして何かに夢中になることも大切です。

最近では1円パチンコなどが登場し、低額で遊べるため一部の高齢者の間では大人気があるようです。脳に刺激を与え活性化するという点では良いことだと言われています。

他にもテレビゲームをすることで手先を動かしたり、ゲームの達成感などを得ることによって脳を活性化に繋がります。

さらにアロマセラピーも認知症改善を行う一つの手段として知られています。

香り嗅ぐことで嗅覚神経が刺激されることが目的で、ローズマリー、レモン、オレンジ、ラベンダーなどが良いと言われています。

食生活で認知症予防

食品の中には認知症の予防に効果があると言われているものがいくつかあります。
  • 野菜ジュース
    週3回飲む人は週1回未満の人に比べてアルツハイマー病の発症リスクが73%も低い。
  • 魚類
    魚の多くに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳や神経伝達に深くかかわっている。
  • カレー
    ただし、ウコン(ターメリック)入りのものに限る。
  • オリーブオイル
    脳内の神経伝達が円滑になる。
  • コーヒー
    脳の劣化を防ぐ。
  • 胡麻(ごま)
    脳に良くない活性酸素を抑える抗酸化作用がある。
  • ・納豆
    血糖値の上昇を抑え、脳梗塞の予防にもなる。

認知症のアロマ効果

認知症の治療にアロマセラピーが効果的であるということが、最近テレビで放送されて話題になっています。

鳥取大学の浦上克哉先生によって1980年代から研究が進められてきており、「ある匂いを嗅ぐと脳の若返りが期待できる」という画期的な研究結果が発表がされました。

認知症の治療方法は現在「アリセプト」という薬のみで予防の方法等はない状況でした。

しかし、アロマセラピ療法は低コストで副作用が少なく、認知症対策には優れた方法というのです。

また、認知症の中で最も多いとされるアルツハイマー病もアロマセラピー治療が可能であると鳥取大学医学部で実証されています。

アロマセラピーとして使用した精油は、ローズマリー、レモンオイル、ラベンダー、オレンジオイルの4種類で、認知症に対する根本治療法として機能する可能性が高いとされます。

精油は化学合成で加工されたものでなく、自然の植物から抽出した天然由来のものを使う事が大事で精油のビンに「ロット番号」と「精油の学名」が明記されているものを選ぶと良いようです。

アロマの使い方

認知症に効果があるとされるアロマは生活の木というお店やリ・ブレインという鳥取大学ベンチャー企画が販売しています。

リ・ブレインならば精油が既に認知症用にブレンドされているため、使いやすいようですがテレビで取上げられた影響もあり、一時期は入手困難だったようです。

使い方は昼間にアロマペンダントにローズマリー2滴とレモン1滴の精油を入れて持ち歩き、夜はラベンダー2滴とオレンジ1滴の精油をディフューザーで芳香浴すると効果的とされます。

さらにアロマセラピーは認知症の予防にも効果があると言われているので興味のある方はぜひ試してみてください。


認知症の対応

身近な人が認知症になると周囲の人はどのように対応したらいいのか戸惑う人が多いでしょう。

重度の認知症になってくると患者とのコミュニケーションもままならなくなってきますので、初めて介護をする家族には大きな不安や負担を感じることになります。

公益社団法人「認知症の人と家族の会」では、認知症の人と向き合う時の心構えとして「認知症の人のために家族ができる10カ条」というものがあります。

「認知症の人のために家族ができる10カ条」の内容は以下の通りです。
  1. 家族だからこそわかる「あれ?おかしい」というサインを見逃さないこと
  2. 治る認知症もあるので早めの受信を
  3. 認知症の正しい知識を身につける
  4. 介護保険や介護施設などのサービスを積極的に利用する
  5. 質の高いサービスを見分け、選択する目をもつ
  6. 経験者に相談して共感しあい、情報交換をする
  7. 今できる事を知って回復を求めるより、残された能力を大事にする
  8. 恥じず、隠さずにネットワークを広げて協力者を得る
  9. 自分も大事にして自分自身の時間も持つ
  10. 往年のその人らしい日々を続けられるように家族て話し合う
認知症患者の尊厳を守り、適切な援助を受けながら社会生活を継続できるように手助けする事が重要だといえます。

認知症が進むと徘徊夜間不隠がはじまるので危険の防止に注意しなければなりません。

さらに最終段階に入ると寝たきり状態となるので病気を受け入れて心構えをしつつ、患者の日々の生活を支えて行くことが大切です。

最近では、インターネット上でも認知症患者の家族の集い経験談などを閲覧、参加する事ができるので自分ひとりで抱え込まず、積極的に参加して情報交換すると良いでしょう。

認知症サポーター

認知症という病気はその独特の症状から回りから理解されにくい病気です。理解されない事によって認知症の患者さんや家族への負担はとても大きいものになります。

そこで国が実施しているのが認知症サポーターキャラバンというものです。

認知症サポーターを全国で養成し、もし身近な人間が認知症になっても安心して暮らせること目的としています。

認知症サポーターとは認知症サポーター養成講座を受けた人のことを指します。

認知症サポーターになったからといって何かを特別なことをするわけではなく、認知症を正しく理解して認知症の患者さんやその家族を暖かく見守り、支援する事をやっていきます。

認知症サポーターに期待されることは

  • 認知症に対して、正しく理解して偏見をもたない。
  • 認知症患者や家族に対して、暖かい目で見守る。
  • 近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する。
  • 地域で出来ることを探し、相互扶助、協力、連携、ネットワークをつくる。
  • 街づくりを担う地域のリーダーとして、活動する。
例えば、友人や家族に認知症の知識を教えたり、家族に対して病気を理解するように努めたり、近所や街で働く人としてできる範囲で手助けをするなど、活動内容はサポーターによって異なってきます。

認知症サポーター養成講座は地域や職域団体等で住民講座や学習会として行われているので市町村の認知症対策窓口で確認できます。

平成26年12月31日段階で認知症サポーターの数は500万人を超えており、認知症への理解が広まり、ますます認知症の患者さんとその家族、地域の人々が暮らしやすい街になっていくことが期待されます。

認知症の検査

認知症の検査は一つだけでなく、本人や家族への問診、知能テスト、画像診断、血液検査など行ない総合的に判断がなされます。通常、家族への問診から始まり、それをもとに患者自身から話を聞くのが一般的です。

家族は患者さんの状態を一番近くで見てきているので、いつ頃からどのような症状が出始めたのか、事前にまとめておくと良いでしょう。

また、患者本人へは診察時に簡単な知能テストを行います。

知能テストにも様々なものがありますが、日本で最も多く利用されているのは改訂版長谷川式簡易知能評価スケールで、その他にも世界中で最も広く使われているMMSE(ミニメンタルステート検査)があり、複数のテストをして総合的に判断する場合もあるようです。

どのテストも専門医が患者さんの様子を見ながら、実践する事で正確な判断結果が得られます。

認知症の画像検査

問診や知能テストの結果から認知症が疑われる場合は画像診断血液検査を行い、最終的な診断がなされます。

画像診断にはいくつかの種類があり、CT(コンピュータ断層装置)、MRI(核磁気共鳴コンピュータ断層装置)、PET(ポジトロン断層装置)、SPECT(脳血流シンチグラフィ)等があります。

進行した病変にはCTやMRIの検査で詳細な脳の状態が確認できます。

最近ではPETやSPECTによって、分りづらいとされていた初期の脳機能の変化まで確認できるようになりました。

画像診断では脳の委縮梗塞などの病変を調べる事が可能なのでアルツハイマー型か脳血管性障害なのか、さらには進行程度まで把握する事が可能です。

検査結果から軽度認知障害(MCI)と診断されることがあります。

軽度認知症とは認知症と物忘れの境目で物忘れの域は超えているものの、それ以外の知的機能は保たれている状態をいいます。

軽度認知症を放置していると認知症に進むのは4~5割程度とされていて、早い段階で治療すると発症を遅らせたり、発症しても軽症で済むケースがある事が分かってきているようです。


認知症の診断

認知症の診断基準は下記の4つです。
①記憶の障害があること
  • 記憶の障害…一般的に古い記憶が保たれ、新しい記憶から失われていきます。
②失語・失行・失認・実行機能の障害のいずれかひとつ以上があること
  • 失語:言葉がスムーズに出てこない状態。
  • 失行:日常の動作が円滑にできない状態。
  • 失認:末梢の感覚器官の障害がないにもかかわらず、認識できなくなる状態。
  • 実行機能の障害…手順がわからなくなる状態。
③せん妄でないこと
  • せん妄:おもに夜間に不穏となり、活発な幻覚や錯覚がみられる状態。
④ほかの精神障害からは説明できないこと
  • 精神障害がある場合や、若い時から精神障害に罹患している場合は認知症とは判断しない。
認知症の診察では、まず最初に本人や家族への問診とチェックテストから行われます。

とくに家族からの情報はとても重要となり、いつごろからどのような症状が出始めたかなどを整理しておくことが大切です。

画像検査では脳に委縮があるか、血流の異常はあるかなどを確認できるのでアルツハイマー型なのか、脳血管性障害による認知症なのかがはっきりと診断されます。

認知症の診断基準

認知症の診断基準にはいくつかあり、DSM-4、DMS―ⅢR、ICD-10等と呼ばれるものがあります。しかし、これだけでは認知症を判断する事はできません。

世界で最も広く用いられている認知症のガイドラインはDSM-4(アルツハイマー型認知症の診断基準)でアメリカ精神医学会が作成したものです。

同じくアメリカ精神医学会が作成したガイドラインにDMS―ⅢRといわれるものもあります。またWHO(世界保健機関)が定めた研究用診断基準はICD-10です。

認知症は早期発見、早期治療が大事で、軽症のうちから治療を始める事によって薬で進行を遅らせることができたり、健康な時間を長く過ごすことが可能になってきます。

オンラインでも簡易テストが簡単にできるので少しでも気になる症状があればチェックしてみるのも良いかもしれません。

認知症をチェック

現在、国内の認知症診断に最も多く利用されているのが長谷川式簡易知能評価スケールで、認知症・MCI(軽度認知症)を判断する事が可能です。

他にも認知症のチェックテストはインターネット上で検索すると色々ありますので誰でも手軽にチェックできます。

また、病院等や市町村、自治体でも認知症チェックリストを配布しているところがありますので活用すると良いでしょう。

認知症という病気は早期治療によって病気の進行を遅らせたり、軽度の症状であれば改善される方もいらっしゃいますので早い段階での認知症チェックテストは意味があるといえます。

もし、本人がテストをやりたがらない場合、ご家族から見た感じでチェックをしてみても良いでしょう。

チェックテストの結果が悪いからといって「認知症」と診断されるものではありません。あくまでも目安となり、病院へ行って検査をする切っ掛けとなるものです。

若年性認知症のチェックテスト

認知症はお年寄りの病気だと思われがちですが、最近では18歳~65歳未満の若者の間で目立つ若年性認知症が増加傾向にあります。

こちらの方も若年性の病気.COMなどで、簡単なチェックリストがあるのでおかしいと思う症状がある場合はやってみるといいでしょう。

若年性認知症の場合(特にアルツハイマー型)は、老人の認知症に比べ進行が速い場合が多いので、なるべく早い段階で治療に取り掛かる方が有利になります。


参考文献等

  • 基幹型認知症疾患医療センター「認知症の治療はどうするの?」
    島根県出雲市塩冶町89-1
    https://www.shimane-ninchi.jp/ninchisyou/6
  • 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス「認知症」
    東京都千代田区霞が関1-2-2
    https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html
  • 公益社団法人 認知症の人と家族の会『「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条』
    都府京都市上京区猪熊通丸太町下る仲之町519
    http://www.alzheimer.or.jp/?page_id=3109
  • 熊本県認知症疾患医療センター「認知症について」
    http://www.kumamoto-ninchi.jp/ninchi/
  • 国立長寿医療研究センター認知症情報サイト「よくある相談・Q&A」
    愛知県大府市森岡町7-430
    http://monowasure.org/ninchiw/qa/

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