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乳がん

乳がんとは

乳がんとは、乳房の組織から発生するがんのことです。

乳房は、乳腺・乳管・脂肪から構成され、乳腺は小葉(しょうよう)と、より細かな乳管とが集まった腺葉(せんよう)という組織からなり、小葉は乳腺細胞の集まった腺房が集まることによりできています。

乳がんはこれらの組織から起こり、乳管から起こるがんを乳管がん、小葉から起こるがんを小葉がんと呼ばれます。

どのようながんも上皮細胞という細胞から起こります。乳房の場合、乳管や小葉の内側に上皮細胞があり、この部分の細胞ががん化して乳がんとなります。

この他にも乳がんには種類がありますが発生は少なく、多くは乳管から起こる乳管がんとなり、小葉がんに関しては数%程度になります。

乳房には多くの血管があり、近くのリンパ節や他の臓器などへの転移が先に見つかることで乳がんだとわかることも少なくありません。

乳がんの動向

乳がんは圧倒的に女性に多いがんで99%以上が女性の患者さんですが、男性にも全くみられないわけではありません。

世界的には日本を含む東アジアよりも欧米、特にアメリカ系白人に多いとされています。日系移民と日本在住日本人とを比較すると日系移民に多く見られます。

日本人女性では30歳代から発生率が上がり、最もピークになるのは50歳前後(40代後半から50代前半)ですが、高齢になると発生率は下がっていきます。ちなみに男性では60~70歳代での発生が多くなります。

発生率や死亡率の年次推移を見ると、乳がんの罹患者数・死亡者数も年々増加傾向にあります。

また、がんによる部位別の死亡率を見ると、女性のがんの全体のうち1割弱が乳がんによる死亡になっています。

但し、女性の発生と死亡を比較すると、発生数では部位別の中では1位(2012年)と多いのに対して死亡数では5位(2014年)となっています。


乳がんは治るがん

がんについて厚生労働省では様々な調査を行っており、代表的なものにがんの罹患数(がんにかかった人数)や死亡数があります。

実際には治癒に影響するような要素があることから、年代や治療法やステージなど様々な観点から分析されています。

乳がんは罹患数と死亡数のいずれにおいても年々増加傾向にありますが、両方を比較すると乳がんの特徴が見えてきます。

2012年の罹患数を見ると女性がかかるがんとしては、乳がんが1位、次いで大腸がん・胃がんとなっています。

これに対して死亡数(2014年)では、乳がんは5位となっており、1位は大腸がん、2位は肺がんとなっています。

これらの結果を比較すると乳がんで死亡する確率は、他のがんと比べると低いということがわかります。

この数字は女性の場合に限ったもので男性の乳がんは症例が少なく、女性と比べて悪性度が高いという結果が出ています。

また、2006~2008年までに女性でがんと診断された方の5年生存率を各部位別に比較すると、乳がんの5年生存率は92.5%で甲状腺がんについて2番目に長くなっています。

このような結果からも、乳がんは比較的に治りやすい、あるいは長期生存が可能な、がんと言われています。

早期発見で5年生存率は99%

がんの治療効果を表す指標に5年生存率というものがあります。

特に2005~2007年に乳がんと診断された方のステージ別の5年生存率で見ると、ステージⅠでは99.9%、ステージⅢでも80.3%、一方ステージⅣでは33.0%となっています。

ステージが進むほど5年生存率が短くなることから乳がんを治りやすくする要素としては、乳がんが進行する前に治療をすること、つまり早期発見が大切だということがわかります。

このため、乳がんの早期発見を促すためにも、定期的な検診を受けることが推奨されています。

乳がんは早期発見がしやすい

乳がんは他のがんよりも比較的に早期発見しやすいがんとも言われています。

他の部位のがんは体の中にできるため、症状が現れるまで気付きにくい部分があり、また、体の中にあるがんを診断するには様々な検査を受けなければなりません。

これに対して乳がんは、皮膚の表面から触れることができる数少ないがんの一つです。

そのようなことからも自己チェックや定期的な検診などから、いち早く気付ける可能性がある病気だと言えます。

乳がんの生存率とステージ

生存率とは、がんの診断を受けた時点(治療を開始した時点)から、一定の期間を経過して生存している患者さんの割合を出したものです。

5年生存率なら治療開始から5年後、10年生存率なら10年後の生存者の集計ということになります。

生存率は治療を受けた人が分母になりますので、治療効果の評価やがんの治りやすさの目安として用いられる数字です。

このため、生存率は治療方法・ステージ(がんの進行度)などによっても集計されています。

但し、あくまで生存しているかどうかの統計なので、5年後あるいは10年後の再発転移の有無や、健康状態などを示すものではありません。

生存率とステージ

生存率とステージとは高い関連性が見られます。2006~2008年に乳がんと診断された方のステージ別の5年生存率を見てみましょう。
  • ステージⅠ:女性100.0%(男性98.8%)
  • ステージⅡ:女性95.7%(男性88.9%)
  • ステージⅢ:女性82.6%(男性63.2%)
  • ステージⅣ:女性34.9%(男性集計なし)
また、2000~2003年に乳がんと診断された方のステージ別の10年生存率を見てみましょう。(いずれも男性の集計はなし)
  • ステージⅠ:女性95.0%
  • ステージⅡ:女性86.2%
  • ステージⅢ:女性54.7%
  • ステージⅣ:女性14.5%
このように進行度が低いほど生存率が高いことがわかり、乳がんの治療には早期発見が大事だということが読み取れます。

また、他のがんと比べると生存率はどのステージでも平均して高く、乳がんは他のがんと比べると長期生存が可能ながんだとも言えます。

ステージ以外に生存率に左右する要素

乳がんにはサブタイプという、がんがの性質について表す分類があります。このサブタイプによって薬物療法の適応や薬物療法の効果が異なります。

先程のステージ別表にもあるように男女で比較すると生存率が異なりますが、男性の場合は発症数が少ないため、統計としては根拠が弱い状態です。

このようにステージだけで生存率を語るのは難しい面もあります。

また、冒頭で述べたように生存率はあくまで生存の割合であり、健康状態や再発・転移については問わない数字になります。


乳がんの原因

乳がんの原因と考えられているのがエストロゲンという女性ホルモンです。

このエストロゲンの分泌量が盛んな期間に長くさらされていることが、乳がん発症の大きな要因だと言われています。

また、ピルなどの経口避妊薬やホルモン補充療法で使われるホルモン剤には、このエストロゲンを含むものがあり、長期に服用することで乳がんの発症リスクが高まることがわかっています。

一般的に、妊娠・出産や授乳によってエストロゲンの分泌量が変化するため、授乳歴が長いほど乳がんのリスクは下がるとされています。

出産歴も乳がんの発生に関わるという結果が出ており、初産が遅い、若しくは出産回数が少ないほど乳がんになりやすいと言われています。

乳がんと食生活の関係

WCRF(世界がん研究基金)やAICR(米国がん研究財団)では、生活環境因子と乳がんのリスク要因について研究しています。

日本では厚生労働省や日本乳癌学会が、生活習慣と乳がんの関連について日本人を対象として調査・報告したものがあります。

それらの結果を比較して見てみると日本人の調査結果では、食生活・栄養・運動などと乳がん発生との関連性は弱いという報告がありますが、この結果は研究例が少ないため、十分な信憑性があるかは定かではありません。

食生活で乳がん発症の明らかなリスク要因として考えられているのは飲酒習慣です。

日本人では飲酒習慣を持つ女性が少ないものの、年代や閉経前後を問わず飲酒では乳がんの発生が増えるという報告があります。

しかし、これらの研究は約10年ほど前のもので、その後も乳がんの患者数は増加傾向にあり、また、若年性乳がんの増加していることから、食生活の欧米化が乳がんの増加に関連するのではと考えられています。

体格も乳がんの関係

同様にWCRFやAICRの調査では高身長が乳がんのリスク要因になるという報告があります。

成人期の高身長では、閉経前乳がん・閉経後乳がんのいずれも出生時の高身長は、閉経前の乳がんで関連性があると言われています。

また、肥満が乳がんの原因になるのではという話がありますが、これは閉経後の話になります。

閉経前では、むしろ肥満の方が乳がんには予防的と言われ、逆に痩せている方が乳がんになりやすいという報告があります。

生活習慣においての原因

他のがんと同様に飲酒喫煙者では乳がんの発生率が高くなることで知られています。また、ストレスも乳がんとの関連性が言われています。

ストレスと乳がんとの関連は調査しづらいものですが、ストレスを受け続けることで、ホルモンバランスの乱れを生じやすいことなどが乳がん発症に影響しているのではないかと言われています。

乳がんの危険因子

統計から様々な乳がんの危険因子が指摘されています。
  • 40歳以上
  • 初経年齢が早い
  • 閉経年齢50歳以上と遅い
  • 出産経験がない、少ない
  • 初産年齢が遅い
  • 授乳経験がない、短い
  • 閉経後の肥満
  • 飲酒習慣がある
  • 喫煙
  • 運動不足
  • ホルモン補充療法を受けた
  • 経口避妊薬を長期間使った
  • 良性の乳腺疾患の既往歴がある
  • 糖尿病
  • 家族(母親や姉妹など)に乳がんの人がいる

乳がんとエストロゲン

乳がんの発症はエストロゲンと関連性が深いことがわかっています。

乳がんの多くはエストロゲンがなければ成長することができません。

経口避妊薬や閉経後のホルモン補充療法で使われる薬などに含まれるエストロゲンにおいてもリスクは上昇します。

しかし、そこまでリスクは高くないことからも、体内で作られる内因性のエストロゲンが乳がんの発生や成長に強く関わりがあると考えられます。

若い頃に卵巣を摘出する手術を受けた女性などのエストロゲンレベルが低い人では、乳がんの発症率が低いことからも乳がんとエストロゲンとの関係は明らかだと考えられます。

エストロゲンとは、主に卵巣で作られるホルモンです。

女性の体が子供を産む準備を始める思春期から急激にエストロゲンレベルは上昇し、閉経まで高い状態で続きます。

このようにエストロゲンレベルが高い状態において長い期間さらされている女性(初経が早い、閉経が遅い、40歳以上、授乳期間がない・短い)が乳がんにかかりやすいと考えれます。

また、エストロゲンレベルが高い状態が続くと乳がんの再発のリスクも上がることが言えます。

エストロゲンは、脂肪細胞などが持っている酵素からも作られ、閉経後に肥満になった人ではエストロゲンの産生量が減りにくく、エストロゲンレベルが高いことから乳がんのリスクも上がると考えられています。

逆に閉経後の運動習慣は、乳がんのリスクを低くすることが統計で明らかになっています。

その他のリスク因子

出産経験がない・出産回数が少ない・初産が高い人などに乳がんの発生リスクが高いと言われています。

これは妊娠・出産に伴う乳房の発達とともに、乳腺の細胞が悪性化しにくい組織に変化するからではないかと考えられます。

その他、飲酒喫煙といった生活習慣は、他のがんと同様に乳がんのリスク因子として統計で相関関係が見られています。

また、乳がんには遺伝性の乳がん(家族性乳がん)があり、関連する遺伝子が存在することが知られています。

母親や姉妹・おばといった血縁が近い家族に乳がんに患った人がいる場合、遺伝性の乳がんも疑われることになります。

乳がんを発症しやすい人・年齢

乳がんの多くはエストロゲンという女性ホルモンに関係したエストロゲン依存性のがんだとされています。

エストロゲンとは、妊娠・出産に備えるために準備させる働きをするホルモンとなり、エストロゲンの分泌量は思春期から閉経にかけて増えます。

乳がんの発症には、このエストロゲンが大きく影響し、長くさらされることで乳がんが発症しやすいと言われています。

乳がんと年齢の関係

乳がんは他のがんと比べ、比較的若い人に発生しやすいがんと言われ、一方の大腸・肺・胃などのがんでは高齢になるほど発症率が高くなります。

乳がんの発症は、30代後半、若しくは40歳以上から増加し、最も発症のピークとなるのは40代後半から50代前半になります。

そして、50代前半になると乳がんの発症率は高齢になるほど減っていきます。

これは先ほど挙げた「多くのエストロゲンに長くさらされた女性に乳がんが起こりやすい」が一致し、閉経後はエストロゲンの量が減ることが考えられます。

通常、閉経後はエストロゲンの量は減ってしまいますが、脂肪細胞や卵巣、副腎などに含まれる酵素がテストステロンという男性ホルモンがエストロゲンを代わりに作り出す働きをします。

この酵素が脂肪細胞に含まれていることから、閉経後の肥満はエストロゲンの量が高い状態を維持させてしまうため、乳がんを発症しやすい状態であると考えられています。

若年性乳がんと家族性乳がん

他のがんと比べると発症年齢が若いとされる乳がんですが、その中でも35歳未満で発症するものを若年性乳がんと呼びます。

乳がんの発症数は年々増加傾向にありますが、とくに増えているのはこの若年性乳がんです。

その要因として考えられているのは、食生活の変化や生活習慣の変化、体の成長が早くなったことなどが考えられています。中でも見逃せないのは家族性乳がんの存在です。

家族性乳がんとは、遺伝性の乳がんです。

アンジェリーナ・ジョリーがその予防のために乳房を切除したことでも有名になりました。

家族性乳がんは、母親や姉妹・おばなど女性の血縁者に乳がんや卵巣がんの患者がいる場合に疑われ、10代や20代といった若い女性にも起こることがあります。

関与する遺伝子も明らかになっているため、遺伝子検査等が行われています。


乳がんと間違いやすい病気

乳がんと間違いやすい疾患としては、主に以下のようなものが挙げられます。
  • 乳腺症
  • 乳腺線維腺腫
  • 乳腺炎
  • 乳腺嚢胞(のうほう)
  • 乳腺葉状腫瘍
  • 乳管内乳頭腫
乳がんの代表的な症状に「乳房のしこり」がありますが、しこりの8~9割程度が乳がん以外の良性疾患だという報告があります。

一方、乳がんの一種なのに、乳がん特有の症状がみられないパジェット病というものもあります。

このパジェット病では、乳頭にかさぶたのようなものが出来たり、乳頭がかさついたりするため、発疹や皮膚病と勘違いして放置してしまう人も少なくありません。

乳腺症

乳腺症とは、乳房の経年変化や生理的変化によって起こるものなので病気ではありません。

思春期以降、排卵や月経による女性ホルモンの分泌周期とともに乳腺の細胞も増殖したり、萎縮したりを長期に繰り返して行くことで乳腺に線維化(古くなった組織が凝り固まるようになる)が起こります。

これにより、乳房に硬いしこりを触れたり、痛みを感じたりするのが乳腺症です。

女性ホルモンの影響を受けるため、月経周期とともに強くなる痛み、若しくは周期的な痛みを感じることが多いのも特徴です。

乳腺症は、マンモグラフィーなど画像検査において、乳がんとの鑑別が難し場合があり、精密検査や定期検診が勧められ、40代くらいの女性に多いとされています。

乳腺症は、生理的変化の一つであるため、治療の必要はないとされています。

乳腺線維腺腫

思春期から30代くらいまでの若い人に起こりやすい乳房のしこりが乳腺線維腺腫です。

乳腺の良性腫瘍となり、乳腺と線維細胞が増殖してできますが、原因ははっきり解明されていません。

触れると「くるくる」とよく動く、弾力がある「おはじき」のような丸いしこりができます。触っても痛みはないことが多いです。いくつもできたり、両側の乳房にできることもあります。

通常は治療の必要はありませんが、あまり大きくなると切除することもあります。乳房の発達とともにだんだんと、しこりがわからなくなることが多いと言われています。

乳腺炎・乳腺嚢胞

乳腺が何らかの原因によって炎症を起こすのが乳腺炎です。炎症は乳頭(乳首)からの細菌感染で、乳汁がうっ滞すると起こりやすく、授乳中の方に多いとされています。

時折、授乳期以外の方にも見られることがあり、症状がはっきりしないような場合には乳がんとの区別が難しいことがあります。

炎症が酷いと乳房が熱を持って腫れ、乳房の張りや痛みを感じ、発熱することがあります。

治療としては抗生物質を投与するとともに熱や痛みに対し、乳房を冷却したり解熱鎮痛剤が用いられることがあります。

乳腺嚢胞ですが、乳腺炎の一種とも言えるもので、乳管に分泌物がたまった袋(嚢胞)ができるものです。

乳腺葉状腫瘍

稀な腫瘍ですが乳房にできる「ゴツゴツ」とした凹凸があり、抑えると少し弾力を感じるようなできものは葉状腫瘍であることが多くなります。

なぜ、葉状腫瘍ができるのか原因は明らかではなく、大きくなるのが速いのが特徴です。

組織検査をすると良性~悪性の場合まで様々で、基本的にはすべて手術で切除するのが基本的な治療方針です。

乳管内乳頭腫

乳管にできる良性のポリープのようなできものが乳管内乳頭腫になります。乳管にできるため、乳管から分泌物が出たり、それに血が混じったりすることがあります。

乳がんとの区別をするには細胞を確認しないと分らないことが多いため、組織を切除して検査する場合があり、乳管内乳頭腫であれば特に治療は必要ではなく、経過観察になることが多いです。

乳腺症

乳腺症とは、ホルモンの影響によって乳腺が増殖したり、縮んで線維化を繰り返しているうちにその部分が混在し、しこりのように固くなった状態だと考えられています。

明らかな原因ははっきりしていませんが、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンのバランスの乱れなどでも起こりやすいと考えられています。

しこりのようなものを触れたり痛みを感じたりしますが、乳腺症はいわば生理的変化であり、経年変化であると言えるもので病気ではないとみなされます。

上記のように、ある程度乳腺の増殖と萎縮を繰り返した後に起こることから、30代後半から閉経まで40代くらいの女性に最も起こりやすいと言われています。

2016年10月に女優の真矢みきさんが乳腺症を告白したことでよく知られるようになりました。

しこりがあるため、乳がんと思い違いをして不安になる方も少なくありませんが、画像検査などをすると乳がんとは異なることがわかりますが診断は難しい場合があります。

また、似たような名称の病気で乳腺炎という病気がありますが、こいらは全く違う状態になります。

乳腺症の症状

乳腺症の主な症状は以下のようなものです。
  • 乳房の痛み(月経周期とともに強くなったり、弱くなったり、周期性がよく見られる痛み)
  • 乳房にしこりを触れる(線維化した乳腺を触れるので凸凹したものを触れることが多い)
  • 乳頭から分泌物が出ることがある(透明~白っぽいもの)
一方、乳がんの初期では、痛みなどの症状を伴うことはほとんどありません。痛みが月経とともに周期性を伴う場合は、乳がんではなく乳腺症の場合が多いと言えます。

乳腺症の治療は必要?

乳腺症は先に挙げたように生理的なもので、病気ではありませんので治療の必要はありません。

乳腺症の症状が強い場合、画像上で乳房の広い範囲にもやのように乳腺が線維化した部分が見え、広い範囲でしこりを触れます。

この中に乳がんが紛れ込んでいる可能が0%ではないので、精密検査や定期的な検査を受けることが勧められます。


乳がんの種類

病理型(病理組織学的)分類は、乳がんでは最もよく用いられる分類の方法となり、顕微鏡でがん組織を見た形によって分類されます。

乳がんの病理型の種類としては大きく、以下の2つに分けられます。
  • 非浸潤がん
  • 浸潤がん(一般型・特殊型)

非浸潤がん

乳がんの約9割が乳管で発生し、残りの多くは小葉で発生します。乳管や腺葉(小葉が集まったもの)に留まっている段階のものを非浸潤がんと呼びます。

発生箇所によって、非浸潤性乳管がん、あるいは非浸潤性小葉がんと呼ばれます。

この段階ではあまり進行していない早期となりますので、しこりを触れないことが多くなります。

そのため、自己検診などでしこりを触れて気づくのではなく、血液が混じった乳汁や、乳がん検診のマンモグラフィなどで発見されることが多いようです。

局所の段階となるので転移がないことが多いのですが、放置してしまうと周りの組織や乳管の中にがんが進行することがあります。

浸潤がん

非浸潤がんに対し、がん細胞が乳管や腺葉から外に進んだ段階のものを浸潤がんと呼びます。

しこりを触れるまでに大きくなった乳がんのほとんどは浸潤がんになります。

実際には周りの組織への浸潤と乳管の中を広がっている部分との両方を含んだケースが多いようです。

浸潤がんは性質や特徴から、一般型特殊型に分けられます。

乳がんの約9割は、この一般型と言われる浸潤性乳管がんとなり、乳頭腺管がん充実腺管がん硬がんの3種類があります。

男性の乳がんも大半がこの浸潤性乳管がんになります。

特殊型には、粘液がん・髄様がん・浸潤性小葉がんなど12種類があります。浸潤性小葉がんは、男性の乳がんでは見られていません。

パジェット病

パジェット病とは、乳房にできるがんの中でも皮膚にできるがんの一種でページェット病とも呼ばれます。乳房以外にも陰部や骨にできることがあります。

パジェット病は治療する上では乳房のがんとして扱われるため、上記の病理型に加えて3種類目の乳がんとされています。

パジェット病ではしこりはできませんが、乳管の中を進んで乳頭(乳首)から現れ、乳頭がびらん(皮膚があれてただれたようになること)することで見つかることが多くなります。

乳がん全体の0.5%程度の発症率だと言われています。

炎症性乳がん

炎症性乳がんは、がん細胞がリンパ管の中に入り込んで乳房の皮膚のリンパ管が詰まるため、乳房が赤く腫れて熱を持ったようになるものです。

乳頭の近くに起こると乳頭が陥没したりして見えます。また、皮膚もみかんなどの果実の皮のように凸凹した状態が見られます。

サブタイプ分類

乳がんにおいて薬物治療を行う際、がん細胞の性質(ホルモンの受容体や特殊なたんぱく質など)を調べることで、がんの特性に合わせた薬物を選択できるようになります。

この時に用いられるがん細胞の分類が、サブタイプ分類になります。

サブタイプ分類の検査項目には、ER(エストロゲン受容体(レセプター))・PgR(プロゲステロン受容体(レセプター))・HER2Ki67という項目を用います。

この結果の組み合わせにより、ルミナルA型・ルミナルB型・HER2型・トリプルネガティブという4種類に分けられます。

乳がんの症状

乳がんは、乳腺の中の乳管あるいは小葉から発生するがんになります。

乳房の機能や構造の特徴としては、皮膚の表面にある・血管やリンパ管に富む・乳汁を作る働きをするなどがあり、それに関連して乳がんでは以下のような症状がよく見られます。
  • 乳房のしこり
  • リンパ節の腫れ・しこり
  • 乳房の一部がチクチクする、違和感がある
  • 乳頭から分泌物が出る、分泌物に血が混じる
  • 乳頭のかゆみ、乳頭のただれ
  • 皮膚がひきつれる、乳房の皮膚のくぼみ(えくぼのようなものができる)、乳房の形の変化
  • 皮膚の色の変化、赤く腫れて熱を持つ

乳房のしこり

がんがある程度大きくなり、しこりを作ると皮膚の表面からでも触れられることがあります。

但し、しこりがあるからといってもそれが必ず乳がんというわけではありません。しこりができる乳房の病気は他にいくつもあります。

例えば、授乳中にできる乳房のしこりは乳腺炎の場合も多く、他にも乳腺症乳腺線維腺腫葉状腫瘍などがあります。

乳がんのしこりの判断は非常に難しいので、違和感などを感じたら専門医を受診することが勧められます。


リンパ節の腫れ・しこり

乳房はリンパ節に富む臓器ですので、しこりを触れる前にリンパ節に転移することがあります。

乳がんがリンパ節に転移した場合、リンパ節の腫れや痛み・違和感・腫れたリンパ節をしこりとして感じる、腕がむくむといった症状が現れることがあります。

このような症状を感じやすいリンパ節は、乳房の周辺にある、腋の下・鎖骨の上・胸骨のそば(胸の中心を縦に通る太い骨のそば)などが考えられます。

乳頭からの分泌物の異常

乳がんが発生しやすいのは、乳腺の中でも乳管という部分です。乳管とは乳頭までの乳汁の通り道になります。

このため、乳管の中にがんができると血の混じった分泌物が出ることで自覚することがあります。

皮膚のひきつれ・乳房の形の変化・皮膚の色などの異常

乳がんの組織が育つと周辺の組織を引き込むように進んでいきます。このため、皮膚も引っ張られて、皮膚のひきつれや、えくぼのようなくぼみ、乳房の形の変化などが起こります。

また、乳がんの細胞がリンパ節に詰まってしまうと、皮膚が赤く腫れて熱を持つ炎症性乳がんという状態になります。

但し、乳がん以外で乳房に炎症を起こす場合があり、乳房が細菌感染して起こる、乳腺炎・蜂窩織炎、乳腺症、線維腺腫などが考えられます。

注意したい「無症状」

先ほど乳がんの主な症状を挙げましたが、乳がん発見時に必ずしも症状があるわけではありません。

無自覚無症状で乳がんが見つかる方も多くいます。症状を感じにくい乳がんは以下のような場合が考えられます。
  1. 乳がんの大きさが、しこりとして触れるほど十分に大きくなっていない場合。
  2. がん細胞が乳房の奥の方にある場合。(特に乳房や乳腺が発達している人では気づきにくい)
  3. がん細胞がしこりを作って大きくなるタイプではなく、バラバラと広がっていく場合や乳管に沿って枝のように拡がるタイプの場合。
いずれも、がん細胞がある程度大きくなったり、進行していないと症状に気づきにくいタイプです。

乳がんの初期症状で多いのは「無症状」

日本乳癌学会ではがんの進行度(病期・ステージ)を診断する際、しこりの大きさとしては「2cm大まで」を初期の乳がんと考えています(これに加えてリンパ節などの転移を起こしていない場合)。

対して、一般に乳がんをしこりとして触れるのは、約2cm位まで大きくなった頃だと言われています。

つまり、しこりとして触れにくい、症状の出にくい状態が「初期がん」だとされているのです。

また、先ほど挙げたように皮膚のひきつれや乳、房の形の変化などは、あるていど腫瘍が大きくなることで現れてくる症状になります。

初期がんは非浸潤がんと言って、乳管や小葉などがんが発生した場所から外に浸潤していない場合も含まれ、やはり症状が現れにくいとされています。

初期の乳がんであるパジェット病ですが、乳頭のただれやかさつき・乳頭のかゆみなどで自覚されることが多くあります。

一見、普通のかさぶたのように見えることもありますが、乳頭の皮膚に異常が長く続くようであれば専門医を受診しましょう。

遠隔臓器への転移による症状

乳房は血管にも富む臓器のため、がんが血流に乗って他の臓器に転移することで症状が現れ、それにより乳がんが見つかる場合があります。

乳がんが血行性に転移しやすいのは、肺・肝臓・骨・脳などが考えられ、症状は転移する臓器にもよりますが、症状があまり現れないことがあります。

肺の場合は咳・血痰・呼吸困難・声がかれるなどの症状が考えられ、腰や背中など骨の痛みを感じる時には骨転移が疑われます。

また、肝臓に関しては症状は出にくくなりますが、場合により黄疸や倦怠感・食欲不振などが起こることがあります。

脳転移の症状は、転移した部位により様々で、頭痛・吐き気・めまい・けいれんなどが考えられます。


乳がんのしこり

乳がんの症状として、よくイメージされるのが乳房のしこりではないでしょうか?

乳房は皮膚の表面にある臓器なため、がんがある程度の大きさになれば体の表面から触れて知ることができるのは、乳がんの特徴の一つと言えます。

但し、しこりができる疾患は乳がん以外にもあるため、しこりがあるから必ず乳がんというわけではありません。

乳腺症のような乳房の生理的変化や良性疾患である乳腺症、乳がん以外の腫瘍もあります。実際、乳房のしこりの訴えの9割ほどは良性疾患だったという報告もあります。

乳がんのしこりの特徴

しこりの感触や硬さ

乳がんのしこりに多いのは触ったときに「ゴツゴツ」と硬く感じ、表面が「でこぼこ」したような感触のものが多くなります。

また、触ったときに周りとの境目が分かりにくいように感じるものが多く、また、触ったときに痛みを感じにくいものが多いとされています。

これに対して「つるっと」なめらかで、形がはっきりし、ゴムのように少し弾力のあるものには良性が多いとされています。

しこりが動くような感じ

触れてみて「コロコロ」と動くような流動性があるしこりは良性のものが多いとされています。対して、乳がんでは周りの組織とくっついているような動きにくいものが多いようです。

乳がんのしこりができやすい位置

鏡の前に立って、片方の乳房を一つの円形と考えて乳頭(乳首)を中心に縦横に4分割するイメージで考えてみてください。

乳がんの発生は、乳房の上半分で体の外側の部分が最も多いとされています。次に多くみられているのは乳房の上半分で体の内側の部分だとされています。

その次が乳頭から体の中心方向に直ぐ横付近、それから、乳頭のすぐ下の位置の順にできやすいという集計があります。

乳がんのしこりの特徴をお話しましたが、もちろん乳がんとよく似た性質をもったしこりには良性の場合もあり、触診で乳がんかどうかを判断することは専門医でも難しい場合があります。

乳がんの進行速度

乳がんは、他の部位のがんと比べて比較的進行が緩やかだと言われています。しかし、実際はそうとも言える点もあれば、そう言い切れない点もあります。

がんの進行速度の目安にされるのはこの細胞分裂の速度になり、細胞分裂によって倍になる速度をダブリングタイム(倍加時間・倍増期間などとも言う)と呼びます。

がん細胞のダブリングタイムは1~3か月程度と言われており、乳がんにおいてのダブリングタイムの平均は約90日と言われています。

この数字で見ると、しこりとして自覚されやすい1cm程度に成長するまでに7~8年かかることになり、他の部位のがんと比べると緩やかだと言われるのはこの故ではないでしょうか。

進行速度とその意義とは

乳がんの進行速度の意義をどう捉えるかというのは、ステージによっても異なってきます。

例えば、ダブリングタイムで見ると1cm程度の早い時期に発見すれば、2cm大に成長するまでに数か月かかることになります。

セカンドオピニオンを受けたり、治療方針を検討する時間の余裕が出来るのではないでしょうか。

一方、進行速度が同じでも早期の段階の小さいがんが2倍に成長するのと、大きくなったがんが倍に成長するのでは、体への影響や転移の危険性などが全く違うことがわかります。

このようなことから、やはり半年~1年程度に乳がん検診を受けることが早期発見の鍵になることがわかります。

乳がんの進行速度に影響すること

ある調査では乳がんのダブリングタイムが1~27か月と、かなり幅があったという報告があります。

実際には乳がんの種類、患者の年齢、ステージ、原発巣か転移巣かなどにより、進行速度に差があると言われています。

がん細胞では一般的に分化度が低い(未熟な性質の細胞)ものは、増殖速度が速いと考えられます。

また、患者の年齢が若い方が進行が速い場合が多く、さらに原発巣よりも転移巣の方が進行が速いと考えられています。

乳がんの種類と分化度を見ると、低分化なものに該当するのが硬がんとなり、他の乳がんよりも進行が速いと言われます。

また、乳頭腺管がんは分化度が高いため増殖速度が遅くなる場合が多く、また、充実腺管がんは分化度が中程度のタイプですが、リンパ節転移の可能性がやや高いとされています。


乳がんの末期症状

医療用語で終末期とは「これまでに実施されている治療方法では、その疾患の治癒・回復の見込みはないと専門医が診断した状態」を指し、また、余命に関しては概ね半年程度と見なされています。

末期という言葉は一般的によく使われる言葉ですが、終末期と同様に定義が曖昧な言葉です。

ここでは末期という言葉は「終末期」を指しているものとしてお話していきます。

乳がんの末期とは

終末期とは患者さんの状態に応じ、医師が判断するものです。一概にどのような状態を末期と言えないことはご理解いただけると思います。

乳がんがどれくらい進行している状態かは、日本乳癌学会による「臨床・病理乳癌取り扱い規約」による病期分類により判断されます。

病期とはステージとも呼ばれるもので、乳がんのステージは0~Ⅳの5段階に分類され、最も進行しているのがステージⅣです。

規約による乳がんのステージⅣとは、「別の臓器に転移している、乳がんの転移しやすい臓器:骨、肺、肝臓、脳など」を指します。

ここでは最も進行しているとされるステージⅣの症状についてお話していきますが、ステージⅣ=終末期(末期)と考えるのは早計だと考えなければなりません。

乳がんのステージⅣ

乳がんは乳腺の中の乳管あるいは、小葉から発生するがんになりますが、乳房は血管やリンパに富む臓器です。

このため、乳がんのしこりが小さい、あるいはがん細胞が多く増殖していなくても、乳がんが発生した場所によっては、他の臓器に転移したり、リンパ節に転移したりすることがあります。

ステージⅣでは「別の臓器に転移している」状態となり、血流に乗ってがん細胞が転移した状態全般を指します。

患者さんにより、乳房にできたがん細胞の状態・リンパ節転移の有無や程度・血行性転移(他の臓器への転移)の程度は実に様々だと言えます。

また、転移によって現れる症状も様々となり、時にはステージⅣであっても無自覚なこともあります。

末期状態では何が起きているのか

がん細胞の進行

乳がんがかなり進行すると皮膚の表面に、がん細胞が顔を出した状態になることがあります。

この場合、皮膚がただれたり、ひきつれたりすることで痛みを感じることがあり、また、傷が皮膚表面にありますから、出血したり浸出液が出ることがあります。

リンパ節転移の進行による症状

乳がんで転移を起こしやすいのは、「腋の下」「鎖骨の上」「胸骨(胸の中心の太い骨)付近にリンパ節」が考えられます。

リンパ節に転移が進行するとリンパ節の腫れや痛みを感じることがあります。

また、リンパの流れが滞るため、酷く腕がむくんだり、腕のしびれや冷えを感じたり、けがをすると治りにくくなったりします。

遠隔臓器への転移による症状

血流に乗って運ばれた、がん細胞が乳がんと直接に接していない臓器に辿り着いて、増殖することを遠隔臓器への転移や血行性転移といいます。

このような転移を起こしやすいのが、主に血流に富む肺・肝臓・骨・脳などです。
  • 肺転移の症状:咳・血痰・喀血・声がかれるなど、進行すると呼吸困難を起こすことがあります。
  • 肝転移の症状:肝臓は沈黙の臓器ともいわれ、進行するまで症状が出にくい臓器だと言われており、倦怠感・微熱・食欲不振・吐き気など、さらに進行すると黄疸や腹水が起こることがあります。
  • 骨転移の症状:腰や背中・肩・足など骨の痛みを感じるときは骨転移が疑われます。転移を起こした部分の骨が弱って骨折しやすくなることがあります。
  • 脳転移の症状:脳のどの部分に転移したかによって症状は様々となり、頭痛・めまい・吐き気・けいれん・意識障害・麻痺・記憶障害などの症状が考えられます。

リンパ浮腫

乳房はリンパを富んだ臓器で、乳房の近くにはいくつかのリンパ節があります。

乳がんの手術において、リンパ節転移した部分や転移の予防で病巣近くのリンパ節を切除することがよくあります。

手術でリンパ節を切除すると、本来はリンパ液を心臓に戻す役割をしていたリンパ節がなくなる(もしくは少なくなる)ことでリンパの流れが滞ります。

こうして滞ったリンパ液が溜まって、溜まった部分がむくみを起こしてしまうのがリンパ浮腫です。

手術が原因で起こることが多いですが、手術の方法によってそのリスクは異なります。切除したリンパ節が多いほどなりやすいと考えられます。

また、手術でリンパ節を切除している箇所に放射線治療を加えたり、リンパ節転移や転移性再発が起きたり、感染症を起こすとリンパ浮腫が起きやすくなります。

さらに手術後のリハビリなどの予防策が不十分だったり、手術側の腕を酷使したりすることでリンパ浮腫が起こりやすくなることがあります。

リンパ浮腫の症状とは

酷い浮腫み(むくみ)のため、浮腫んだ部分に痛みやだるさ・しびれ・冷えなどを生じます。

また、リンパ液は免疫を司っているため、浮腫んだ部分に感染症を起こしやすく、それが治りにくいこともしばしばです。

乳がんでは、手術した側の腕に多く起こります。手術後早期から起こることもあれば、数年経ってから起こることもあります。

一時的な場合もありますが、生涯続くような長期のケースもあります。

リンパ浮腫の対処

リンパの流れや戻りを良くするため、マッサージやバンテージやサポーターなどを使って適度な圧を加える方法、リハビリテーションがあります。

しかし、これらの方法が適切でないと、返ってリンパの流れが阻害されたり、皮膚を傷つけることがあるため、医師や専門看護師・理学療法士などの指導を受けることが勧められます。

利尿剤やアルブミン製剤などの薬物療法が、浮腫を軽減させる目的で用いられることもありますが、リンパ浮腫の根本的な治療にはならないこともあります。

リンパ浮腫の予防

リンパ浮腫は一度発症してしまうとなかなか改善されにくい場合もあります。このため、まずは予防することが大切です。

リンパ浮腫の予防には、主に以下のようなことが挙げられます。

手術した側の腕を酷使せず、適度な運動を心掛けること

手術した側の腕で、重い荷物を持つ・腕を下にしたまま長く過ごすといったことは避けましょう。

しかし、動かさないのも返ってリンパの戻りを妨げるので、日常生活程度なら腕を動かした方が良いと考えられます。

感染を予防する

手術した側の腕に感染を起こすとリンパ浮腫が起こりやすくなります。このため、腕を傷つけないことが大事です。

注射や点滴は反対側の腕などを使うようにします。庭仕事などでは手袋をつけることが望ましいです。また、やけど・虫刺され・ペットによる傷・針仕事などにも注意が必要です。

けがや虫刺されなどの部分の腫れが、数日引かないような場合には医師の診察を受けましょう。

締め付けない・圧迫しない

締め付けや圧迫は、リンパ浮腫のもとになります。

袖口にゴムのついた服は避け、血圧測定は手術と反対側の腕で行います。手術側の腕を下にして寝たり、腕枕をして寝るのは避けましょう。


乳がんの治療・手術

乳がんの主な治療方法には、手術(外科手術・外科的治療)・薬物療法(内分泌療法・化学療法・分子標的薬治療など)・放射線療法があります。

これらは乳がんの標準治療とされており、他には免疫療法などがあります。

また、ステージに関係なく症状を軽減し、日常生活を過ごしやすくするための緩和治療があります。

この標準治療では、乳がんの進行状況や乳がんの型などにより、それぞれを単独で行う場合と、いくつかの治療法を組み合わせて行う場合とがあります。

乳がんの治療方法の選択

日本において乳がんの標準治療は、乳癌診療ガイドラインに記載されています。

ガイドラインには、病状やステージ等に沿って最も効果的で最善だと考えられる治療方法が表されています。

通常、医師は精密検査の結果などから乳がんのステージを診断し、ガイドラインに基づいて治療方法を提示します。

各治療においては、期待される効果、合併症のリスク、体への負担などが異なってきます。

医師の説明を聞き、十分理解し納得してから治療を受けられることが勧められます。

乳がんの主な治療方法について

手術療法(外科手術・外科的治療)

乳がん治療の基本的な考え方は「がん細胞をできるだけ体から取り除くこと」になります。

手術療法は外科的に、がん細胞を切除することを目的としています。ステージ0~Ⅲまでの乳がんでは標準的に選択される方法です。

また、がんの進行度や大きさ、リンパ節転移の有無などによって切除する範囲が異なり、手術方法もそれぞれに変わってきます。

切除する範囲により、乳房温存手術(乳房部分切除術)と乳房切除術(全摘手術)があり、そこにセンチネルリンパ節生検やリンパ節郭清が加わる場合があります。

少し前までは、早期がんでも乳房切除術が主流でしたが、現在はできるだけ切除範囲を小さく済ませるための乳房温存手術が広く行われるようになっています。

また、乳房切除術に関しては、希望した場合に乳房再建術が行われます。

乳房再建術には、乳房切除術と同時に行われる場合と、切除術の数か月後に行なわれる場合とがあります。

薬物療法

手術範囲を超えてリンパ節転移や他の臓器に転移がある場合、また、転移や再発のリスクが高い場合には、全身治療の目的で薬物療法が選択されます。

薬物療法は、ステージが0~Ⅲですと手術療法に加えて行われることが多くなります。

他臓器に転移を認めるステージⅣや、手術で病巣を取り切れない一部のステージⅢでは、薬物療法が第一選択となることが多くなります。

薬物療法には、内分泌療法(ホルモン療法)・化学療法(抗がん剤治療)・分子標的薬治療があります。

乳がんはエストロゲンという女性ホルモンの影響を受けやすいことから、ホルモン療法がよく行われています。

このような薬物療法では、乳がんのサブタイプ分類に応じても薬が選択されます。

放射線療法

医療用の放射線を照射することで、がん細胞を死滅させることを目的とした治療方法になります。

乳がんにおいてよく行われるのは、手術後にリンパ節などに放射線治療を行って再発を予防する目的での治療です。

また、他臓器に転移している場合、脳や骨などの転移巣の治療として行われることがあります。

局所治療として放射線療法を行い、がん組織を小さくしてから手術を行うケースがあります。

腋窩リンパ節郭清

乳房の周辺には、腋(わき)の下(腋窩)・鎖骨の下・胸骨の横などにリンパ節があり、とくに乳がんはリンパ節転移が起こりやすいがんの一つになります。

そのため、乳がん手術においては、腋窩リンパ節を切除するのが、転移を防いで生存率を向上する方法として長らく考えられてきました。

しかし、リンパ節に転移がないうちから、リンパ節を切除しても治療効果としては変わりがないことが分かってきました。

そのようなことからリンパ節郭清による後遺症を避けるため、センチネルリンパ節生検によって調べた上で転移があれば、リンパ切郭清をするというのが最近の主流になります。

腋窩リンパ節郭清の適応と切除範囲

乳がんが発生した場所から、最も近い場所にあるリンパ節をセンチネルリンパ節(見張り番リンパ節)と呼ばれます。

通常、この部分にがん細胞がみられると、そこから先のリンパ節にも転移が疑われます。

手術中、センチネルリンパ節生検の結果においてリンパ節転移があれば、腋窩リンパ節郭清に踏み切ることになります。

乳腺周囲のリンパ節は、乳腺からのリンパの流れ順(転移を起こしやすい順)に、腋窩リンパ節がレベル1、続いて鎖骨方向にレベル2、鎖骨の下がレベル3と分類され、再発や合併症のリスクも減らすためにレベル1および2を郭清することが適切だとされています。

リンパ節郭清による合併症

リンパ節郭清による合併症の主なものには以下のようなものがあります。
  • リンパ浮腫
  • リンパ漏
  • 神経障害
  • 運動障害

リンパ浮腫

リンパ節郭清による合併症で最も代表的なものがリンパ浮腫になります。リンパ節を切除することにより、主に手術側の腕のリンパの流れが滞り、浮腫が起こります。

浮腫が起こる時期はまちまちで、術後から起こる場合もあれば、数か月数年経って起こることもあります。また、一時的なものから生涯続く場合ものもあります。

主な症状は、浮腫・手の痺れ・冷え・浮腫による運動障害・感覚鈍麻・傷が治りにくいなどです。

このようなリンパ浮腫を予防するため、リンパ切郭清後には、術後早期からのリハビリテーションが欠かせません。

リンパ漏

リンパ郭清の際、切断したリンパ管からリンパ液が漏れ出るものです。

リンパ郭清後は、多少のリンパ液の漏出があるため、ドレーンという管を挿入し、リンパ液が腋窩に溜まらないようにします。

術後、自然に軽快したところでドレーンが抜去されますが、時にドレーン抜去後にも腋窩にリンパ液の貯留が見られることがあります。

この場合は注射器などで吸引して取り除かれます。

神経障害・運動障害

腋窩リンパ節郭清の際に周辺の神経が傷つくことで、腕の感覚障害(しびれや痛み)が起きたり、腕が上がりにくかったりすることがあります。

運動障害については、リンパ浮腫の予防も兼ねて術後早期から肩関節のリハビリテーションが行われます。


乳がんの乳房温存手術

乳がんの手術には、がん組織を含む乳房の一部を切除する乳房温存手術(乳房部分切除術)と、乳房そのものを切除する乳房切除術とがあります。

乳房温存手術とはその名の通り、乳房の一部を切徐して乳房の形を温存できる手術です。

傷も小さく済むことが多く、乳房の形を保てるので美観的に優れ、女性らしい乳房を保つことができます。また、肩の運動障害といった後遺症も少なくて済みます。

乳房温存手術の方法

乳がんでの手術の目的は「できるだけ乳がんの組織を体から取り除くこと」です。

このため、乳房温存手術でもがん組織とその周囲を含む範囲を切除します。

切除の仕方によって乳腺円状部分切除術・乳腺扇状部分切除術・腫瘤摘出術といった方法があります。

乳房温存手術では、切除する範囲が小さめのため、通常は手術中に切除組織の端の部分を迅速検査して、がん細胞がないかどうかを確認していきます。

想定範囲よりもがん細胞がある場合、その場で乳房切除術に切り替えるか、後日に乳房切除術を行うこともあります。

また、術前の精密検査もおいて、リンパ節転移が見つかると腋窩リンパ節郭清を、また、転移がない場合にはリンパ節転移の有無を調べるためセンチネルリンパ節生検が乳房温存手術と組み合わせて同時に行われます。

腋窩リンパ節郭清を同時に行った場合、合併症としてリンパ浮腫のリスクがあります。

乳房温存手術は乳房切除術に比べて、がん細胞の取り残しの可能性が高く、術後の再発を防ぐため、乳房温存手術後には放射線治療を行うのが通例です。

術後の放射線療法により、再発リスクが半分程度になるとの報告もありますが、再発が0%になるわけではありませんので、術後に定期的な検診を受け続けることも大事だと言えます。

乳腺円状部分切除術

乳がんの組織を中心にその周囲を大きめに円状に切除する手術方法です。

切除する範囲が比較的小さいので乳房の形の変形が少なく、運動障害などの合併症も少なくなります。

しかし、がん細胞を取り残すリスクがあるため、術前検査での手術範囲の決定や術中の迅速検査での確認が大事になります。

乳腺扇状部分切除術

乳腺とは乳頭を中心にし、枝が伸びるように円状に広がる形をした組織です。

がんの取り残しを最小限にするため、がんが存在している部分を乳頭周囲から周辺に向けて、円の一部を扇形に切り取るように切除するのが乳腺扇状部分切除術になります。

円状部分切除術に比べると切除範囲が広いため、がん細胞の取り残しを減らし、再発のリスクを下げることができる手術法です。

乳房温存手術の中では切除範囲が広いため、乳房の変形がみられることがありますが、乳房切除術と比べて切除範囲は狭いため、美観的には良く、肩の運動障害といった後遺症は少なくなります。

腫瘤摘出術

腫瘍の部分だけを取り除く手術となり、乳房温存手術の中では最も切除範囲が狭い手術です。乳がんでは、再発のリスクも高いため、あまり行われることはありません。

切除範囲がかなり小さいため、乳房の形状はあまり変わらずに済みます。

乳房温存手術が受けられる条件・適応

乳房温存手術の適応は、一概にステージだけでは決められませんが、概ね以下のような条件が揃った場合が多くなります。

しこりの大きさが直径3cm以下で1個だけ

しこりが大きい場合、術前に化学療法(抗がん剤治療)を行うことで小さくできれば受けられることもあります。

乳管浸潤型のがんでないこと

非浸潤型の乳がんであっても、乳管の中を枝が伸びるように乳がんが広がっていると、乳房温存手術は受けることが難しい場合があります。

放射線療法を受けられること

再発のリスクを下げるため、術後の放射線療法が必要となるためです。

これらに加えて再発のリスクも考えた上で、患者さん自身が乳房温存手術を希望することが挙げられます。


乳がんの乳房切除術(乳房全摘出術)

乳房切除術とは、病巣を含む乳房全体を切除する方法となり、乳房全摘術とも呼ばれます。

乳がんの基本治療では、がん細胞をできるだけ切除することがこれまで推奨されてきました。

しかし、現在では乳房温存手術が増え、乳房切除術が適応されるのは、乳房温存手術で対応できないケース、乳がんの根治を強く望まれる場合、手術後の再発した時などが挙げられます。

ダブル・マステクトミー

話題となったアンジェリーナ・ジョリーが受けた手術は、ダブル・マステクトミー(両乳房全摘手術)と呼ばれる左右の乳房を摘出する手術になります。

遺伝性の乳がんでは、片側の乳房に複数個の乳がんを発生したり、一度手術を受けた後でも再発する恐れがあります。

予防のための手術としては、ダブル・マステクトミーが選択され、最近では実際この方法を選ぶ患者さんも少なくありません。

予防的手術であれば、がん発症の恐れがある乳腺だけを切除し、皮膚や乳頭を残す方法が選べますので、比較的に乳房再建もしやすいと言えます。

乳がんの乳房切除術の方法

がん細胞を含む乳房を切除するのが乳房切除術ですが、切除の範囲やリンパ節郭清の範囲などにより、いくつかの手術方法があります。

少し前までは胸筋もすべて切除する方法が主でしたが、現在では胸筋は残す方法が標準的となっています。

胸筋温存乳房切除術胸の筋肉(胸筋)を温存する手術方法です。胸筋にも大胸筋と小胸筋があり、残し方によっていくつかの手術方法があります。

胸筋を残すことにより、運動機能障害が軽く済み、乳房再建術は受けやすくなります。
  • 単純乳房切除術:大胸筋・小胸筋は残して乳房を切除し、センチネルリンパ節生検が追加される方法です。
  • オーチンクロス法:大胸筋・小胸筋は残してやや広めのリンパ節郭清をします(レベル2まで)。現在、胸筋温存乳房切除術ではよく行われている方法です。
  • ペティ法(ペイティー法):大胸筋は残し小胸筋は切除、オーチンクロス法よりさらに広い範囲のリンパ節郭清(レベル3まで)をします。現在ではあまり行われていません。

胸筋合併乳房切除術

胸筋も含めて乳房切除を行う手術です。胸筋を合併切除した場合、乳房再建術が難しいものとなります。

1970年代までは主流だった歴史のある方法ですが、現在では、がん細胞の浸潤が強いものなどを除いてあまり行われていません。

乳頭温存乳腺全切除術

乳腺は切除して、乳頭・乳輪・皮膚を残す手術となり、加えて乳房再建がされる場合があります。

乳頭付近や皮膚付近に、がん細胞が残る可能性が高いため、乳房切除術の対象となる場合、この手術を行える例は限られてきます。

乳房切除術によるデメリット・合併症

乳房切除術で気になるのはデメリットや合併症ではないでしょうか。

乳房切除後の美観と身体的イメージの変化

乳房切除術では乳腺や乳頭を取り除くため、平坦な胸となります。

胸のふくらみを再現するための装具やパッドなどもありますが、肩こりがあったり、左右で不揃いの胸になったり、不自然に見えることもあります。

また、乳房を失ったために女性らしさも失ったと精神的にショックを受けられる方もいます。

手術側の肩や腕の運動障害

乳房切除術を行うと皮膚もある程度切除して縫い合わせるため、皮膚が引っ張られた形になります。このため、腕を大きく上げたり、腋を開くような動きをしにくいことがあります。

このような運動障害は、術後早期から肩や腕の運動を行うことでかなり予防できると言われています。

リンパ節郭清によるリンパ浮腫

リンパ節郭清を同時に行った場合、合併症としてリンパ浮腫のリスクがあります。これを予防するためにも手術は早期からリハビリテーションが行われます。

乳がんのスキンスペアリングマステクトミー

スキンスペアリングマステクトミーとは、日本語でいうと皮下乳腺全摘出という方法です。

皮下の乳腺を全部摘出するという手術方法となり、皮膚や乳頭は残す方法です。乳腺を切除したところに生理食塩水などで乳房の再建をすることができます。

乳房温存手術が難しく、広い範囲の乳がんに対して行われる可能性があります。

スキンスペアリングマステクトミーの方法

スキンスペアリングマステクトミーでは、皮膚のみを温存する方法と、乳頭・乳輪も温存する方法があります。

皮膚のみを温存する方法が狭義のスキンスペアリングマステクトミーになります。乳輪と乳頭は切除し、乳房の皮膚は残して乳腺も全摘出します。

乳腺は乳頭まで繋がっており、小さいがんが乳頭まで波及している可能性が高く、そのような場合には乳頭も切除することになります。

また、乳輪・乳頭も温存する方法は、乳頭皮下乳腺切除術(ニップルスペアリングマステクトミー)と呼ばれる方法で、乳頭への進行が低い場合に選択される方法です。

但し、乳房温存手術の適応外の場合、乳頭へのがんの浸潤の可能性も高い場合が多く、行える症例は少ないと言われていますが、遺伝性乳がんの予防を目的とする乳腺切除手術であれば、この方法を選択することができます。

乳房再建時ですが、自然な外見の乳房を再建することができますが、再建した乳房ともとの乳房では乳頭の位置がずれたりすることもあります。

スキンスペアリングマステクトミーの長所

スキンスペアリングマステクトミーでは、本人の皮膚を生かして乳房の再建ができます。また、もともとの皮膚と乳頭を残して再建するとより自然な乳房再建が可能になります。

また、乳腺を切除する時、脇(わき)の下や乳房の下や乳輪の境界などからメスを入れて手術をすることで、傷を目立ちにくくすることができます。

スキンスペアリングマステクトミーの難点

手術時、皮膚や乳頭へのがん浸潤の可能性がゼロではなく再発のリスクはあるため、手術前にそのリスクについて理解した上で受けなければなりません。

また、乳頭を温存する方法ではありますが、再建手術で手術前の乳房と全く同じ形を再現できるとは限りません。


乳がんの化学療法(抗がん剤)

化学療法とは、抗がん剤が持つ殺細胞作用を活かして、がん細胞を死滅させることを目的とした治療方法になります。

抗がん剤の使用目的としては「手術後、転移や再発予防を目的に行われる」、「手術前、がんを小さくして手術を受けやすくする目的」、「進行したがんや再発がんを小さくして症状を軽減させる」などがあります。

化学療法(抗がん剤)が選択される場合

乳がんでは薬物療法前に、がん細胞の性質(サブタイプ分類)を調べて、その性質に応じて治療効果の高い薬が選ばれます。

化学療法においては、どのサブタイプでも治療適応になりますが、ホルモン療法分子標的薬が効果があるタイプであれば、そちらの治療が優先されるのが一般的です。

しかし、ホルモン療法の効果が得られない、分子標的薬との併用療法の場合、また、トリプルネガティブタイプの場合には、抗がん剤が優先的に選択されます。

乳がんで使用される抗がん剤の種類

抗がん剤の種類は多種ですが、通常は数種類を組み合わせて投与する多剤併用療法が一般的です。

ステージや治療を受ける人の体力などによっても使われる薬は調節されます。

乳がんに使われる抗がん剤は、点滴で投与されるものがほとんどです。

基本的な抗がん剤の治療方法

乳がんでは、アンスラサイクリン系の薬剤(アドリアシン®やファルモルビシン®など)に、アルキル化剤(シクロホスファミド)と代謝拮抗薬(フルオロウラシル)を使うCEF(FEC)療法・AC療法や、タキサン系の薬剤(タキソール®、タキソテール®など)が代表的な抗がん剤となります。

これらの薬剤の組み合わせによって、リンパ節転移がある乳がんでは再発率死亡率が抑えられることがわかってきています。

再発の乳がんの場合、上記に加えて、アルカロイド系薬剤(ハラヴェン®やナベルビン®)や代謝拮抗薬(ゼローダ®、ジェムザール)等の薬剤が用いられたり、それまでの治療歴を踏まえて異なる薬剤を使用することもあります。

CEF療法の場合、投与期間は1日です。初回治療を除けば外来点滴も可能な場合があります。

1日の点滴に20日の休薬期間を置く、21日間を1クールとして繰り返し治療を行います。治療効果の判定や副作用のチェックのために採血や検査を行います。

乳がんの分子標的療法

分子標的薬を使った治療を分子標療法といいます。がん細胞の増殖などに関わっている特徴的な物質や分子や遺伝子を狙い撃ちできる薬です。

分子標的薬は薬の作用が絞られやすく、がん細胞以外の細胞にも作用してしまう抗がん剤とは違って、分子標的薬は副作用が少なく、効果もはっきりしているのが特徴になります。

分子標療法の適応について

乳がんの薬物療法では、分子標的療法・ホルモン療法・抗がん剤治療の中から、効果的な治療を選択するため、がん細胞の性質(サブタイプ分類)を調べます。

分子標的療法が行えるサブタイプは、HER2タンパク陽性の場合になります。HER2タンパクとは、がん細胞の表面にある特徴的なたんぱく質です。

分子標的療法で使用されるトラツスマブ

乳がんの分子標的療法で主に使用されるのは、トラツスマブ(ハーセプチン®)という分子標的薬です。他にはラパチニブ(タイケルブ®)、ペルツズマブ(パージェタ®)という薬もあります。

これらの薬は、がん細胞の表面に存在していて、がん細胞の増殖に関連しているHER2タンパクに結びつくことで、がん細胞に選択的に作用する薬です。

HER2タンパク陽性の乳がんは、乳がん全体の2割強と言われています。

分子標的療法の主な治療方法

トラツスマブなど分子標的薬に、タキサン系の抗がん剤(パクリタキセルもしくはドセタキセル)を組み合わせた方法が一般的となります。

投与は1日で、7日毎に点滴投与(最終回は分子標的薬のみ)を繰り返す28日を1サイクルとする治療法です。

術後補助療法として使う場合や、分子標的薬単体で使われる場合もあります。尚、トラツスマブ治療は効果が低くなるケースも見られます。

トラツスマブ低反応の乳がんに対しては、免疫細胞との併用でトラツスマブの効果を増強させるという研究結果があります。

分子標的薬の副作用

トラツスマブの重大な副作用としては、初回投与時のアレルギー症状心臓への影響が考えられます。

初回投与は必ず入院にて行われ、医師や看護師のもとで緩徐に投与し、経過を観察します。アレルギーでは、悪寒・発熱・呼吸困難などの症状の他、時にはアナフィラキシーショックを起こす可能性もあります。

心臓への影響については、心臓超音波検査(心エコー)を繰り返し行って副作用の有無が確認されます。


抗がん剤による副作用

乳がんで使用される抗がん剤には様々な種類があり、3種類程度の薬の組み合わせがされることが多くなります。

また、抗がん剤によって様々な副作用があり、薬の組み合わせでも一概にどの副作用が出るとは言えませんが、主な副作用には以下のようなものがあります。
  • 消化器症状;吐き気・食欲不振・口内炎・下痢・便秘など
  • 骨髄抑制;白血球・赤血球・血小板の減少とそれによる症状
  • 脱毛
  • 血管痛、静脈炎
  • 皮膚や爪の異常や変色
  • 全身倦怠感
  • 心筋障害
  • 無月経
副作用の程度はグレードで表されます。グレードは1から4まであり、数が多いほど強い副作用ということになります。

乳がんでは定期的に休薬期間を設けながら、数回の抗がん剤投与を繰り返す方法が標準的になります。

副作用の症状の多くは休薬期間中に回復しますが、副作用症状が強い場合には治療の延期をする対応が行われます。

消化器症状

吐き気・嘔吐・食欲不振・下痢といった消化器症状は、治療早期から現れやすく、頻度も高い症状です。

抗がん剤の投与から数日程度で軽快することが多いですが、症状の軽減のために制吐剤や副腎皮質ステロイド剤が使われます。

口内炎や味覚障害なども治療数日後から起こることがあり、口内炎の予防では口腔を清潔に保つ、ビタミン類を摂取する、口内炎を起こしやすいドキソルビシンなどの抗がん剤を投与中には氷などをなめて口内を冷やすなど挙げられます。

便秘は、抗がん剤投与を数回繰り返すごとに悪化することがあるため、野菜や水分摂取に注意し、適度な運動を心がけましょう。

骨髄抑制

骨髄とは、造血機能を司っている臓器で、抗がん剤の影響を最も受けやすい臓器の一つです。

このため、骨髄抑制も避けることが難しい副作用の一つとなり、治療を重ねるごとに副作用が強くなることがあります。

骨髄の造血機能が弱まり、白血球が減ると易感染状態、赤血球が減ると貧血、血小板が減ると出血傾向が起こり、おおむね治療開始2週間前後をピークに起こると考えられます。

感染や出血は、重篤になると生命に関わるケースもありますので、骨髄抑制の兆候を早期に見つけるために抗がん剤投与後は、定期的に採血して血球数がチェックがされます。

骨髄抑制時には、感染予防と出血防止の対策が大事です。

感染予防としては、マスク装着・手洗い・うがい・歯磨き・けがを避ける・生物の摂取を避けるなどがあります。出血予防としては、けがや打撲を避けることが大事です。

また、白血球が減った場合には、白血球を増やすための注射が行われることもあります。

脱毛

抗がん剤治療の副作用と聞くと、脱毛のイメージを持っている方も少なくないのではないでしょうか。毛母細胞が障害されることによる副作用です。

治療が終了すると毛髪は再生します。治療開始2~3週間後程度から脱毛が始まりますが遅れて起こるのは、下から生えた毛髪によって押し出されている状態です。

とはいえ、抗がん剤投与は数クールの繰り返しのため、毛髪が再生するスピードはこれに追いつかないため、どんどん抜けていくように見えます。

精神的ショックを受けることも多い副作用ですが、医療用ウィッグや帽子やバンダナなどを活用するのも良いかもしれません。

毛髪が再生して数年は髪質が変わり、細い巻き毛などになることが多いです。

血管痛・静脈炎

血管痛や静脈炎は、抗がん剤によって血管が傷つけられることによって起こります。

投与している時から血管が痛む場合、点滴速度を緩めたり、抗がん剤の投与濃度を薄めるために他の点滴を加えるなどして投与されます。

また、治療の繰り返しにより血管が固くなったり、茶色っぽく変色が見られることがあるので、点滴する血管を変えたり、中心静脈カテーテルを使うことで対応したりします。

皮膚や爪の異常

抗がん剤の投与を繰り返すことにより、手や指などの皮膚の異常が見られることがあります。黒っぽく変色したり、爪が変形したり、ささくれや爪の割れが起こりやすくなったりします。

予防として抗がん剤点滴中に指を冷やす方法も試みられていますが、効果ははっきりしていません。

心筋障害

必ずしも頻度が高い副作用ではありませんが、乳がんの治療によく使われるドキソルビシンなどでは心筋障害の報告があります。

治療を繰り返すことによって心筋機能の低下がみられることがあるため、心臓超音波検査などでこれを確認します。

無月経

抗がん剤治療によって卵巣の細胞が障害されることによって月経が止まる場合があります。

若い方では治療終了後にある程度の期間が過ぎると、月経が再開することが多いですが、治療後に妊娠を考えている方では治療前に医師と相談しておくと良いでしょう。

乳がんの放射線療法

放射線を当ててDNAに傷をつけることで細胞が死滅する効果を利用し、がん病巣に医療放射線を当てて、がん組織を小さくすることを目的とした治療方法です。


乳がんの放射線治療の目的と適応

手術前後の放射線療法

乳がんでは単独で放射線治療が行われることはほとんどありません。

放射線治療が最もよく行われているのは、乳房温存手術の術後になります。これによって、残存する乳房からの再発を防ぐ目的で行われます。

適応は、乳房温存手術後は必須とされる他、乳房切除術の術後においても、リンパ節転移の数が多かった場合には、再発予防のために行われることがあります。

また、手術前にがん組織を小さくする目的で放射線療法が行われることがあります。

放射線治療の適応外となる場合としては、治療に必要な姿勢がとれない、妊娠中、膠原病がある、過去に胸部の放射線治療を受けたことがある、などの場合が考えられます。

緩和ケアとしての放射線療法

遠隔臓器への転移がある場合、放射線療法が適応されることがあります。

転移したがんを小さくし、骨転移による痛みや脳転移による神経症状などを軽減させる、緩和ケアを目的に行われることもあります。

照射部位や転移の状態や全身状態などにより、照射方法が検討されます。

乳房温存手術後の放射線治療

乳がんの術後放射線療法では、体外から放射線を当てる外照射で行われます。方法は2つあり、全乳房照射追加照射(ブースト照射)です。

全乳房照射では、胸部全体に放射線照射を行うことで再発率を下げることができます。

しかし、局所に放射線を当てるブースト照射に関しては、今のところ効果の根拠が確立されていません。

合計25回に分け、通常は5~6週間ほどの期間で必要線量を照射していきます。

放射線療法の副作用

放射線治療の副作用には主に以下のようなものがあります。照射する部位や線量によっても副作用が異なり、また、緩和ケア目的の照射においても副作用には個人差があります。

放射性皮膚炎

放射性皮膚炎とは、照射部位の皮膚が赤くなって熱を持ち炎症が起こる、ヒリヒリや痒み(かゆみ)などが起こる、水膨れなどができるといった症状が挙げれます。

但し、この症状は治療終了後10日前後で改善していきます。放射線照射中は、掻いたりしないことが大事です。

また、濡れタオルなどで優しく冷やしたり、医師から炎症を抑える軟膏を処方される場合もあります。

肺炎

手術前後の照射においては、胸部に照射することから肺炎を起こすことがあります。微熱や咳が続く場合には、早めに医師に相談しましょう。

その他の症状

全身の倦怠感、疲れやすい、体がだるい、食欲が落ちる、などが出ることがあります。

乳がんのホルモン療法

乳がんは女性ホルモンの影響を受けて発症することから、ホルモン療法はその特性を活かした治療方法となり、内分泌療法とも呼ばれます。

ホルモン療法は、ホルモンの作用を利用してがんの成長を阻害しますので、殺細胞効果がある抗がん剤と比べて副作用も少ないというメリットがあります。

ホルモン療法の目的

通常、手術前にホルモン療法を行うことで腫瘍を小さくさせる目的、手術後では再発を防止などの目的となります。

また、手術が難しい状態、遠隔転移による症状の軽減、腫瘍を縮小させるなどの目的でも使われます。

ホルモン療法の適応

すべての乳がんがホルモン療法の対象となるわけではありません。

ホルモンに反応する受容体を持つタイプの乳がんが治療対象となります。対象となるのは約7割程度と見られています。

効果的に薬物療法が行えるよう、薬物療法を行う前にがんのサブタイプを調べます。

乳がんには、エストロゲン受容体の有無、プロテステロン受容体の有無があり、ホルモン受容体陽性では各組み合わせによるタイプがあります。

手術後、がんの組織検査し、上記のようにホルモン受容体がある(ホルモン受容体陽性)の場合には、ホルモン療法の対象となります。

ホルモン療法で使われる薬と治療方法

ホルモンの働きを妨げることで成長阻害するというのが、ホルモン療法の薬のメカニズムです。

乳がんのホルモン療法で使用される主な薬剤は、抗エストロゲン剤・LH-RHアゴニスト製剤(黄体ホルモン放出ホルモン抑制剤)・選択的アロマターゼ阻害薬・合成黄体ホルモン剤などが挙げられます。

女性は閉経の前後において女性ホルモンの産生が異なるため、閉経前は主に抗エストロゲン剤とLH-RHアゴニスト製剤、また、閉経後には選択的アロマターゼ阻害薬が使用されることが多くなります。

また、治療目的によって治療期間が大きく異なります。手術前であれば数か月の投与期間、術後の再発防止の目的であれば5年~10年位が目安となります。

ホルモン療法と化学療法併用により、生存率が向上するという報告もあります。

ホルモン療法の副作用

ホルモン療法は化学療法に比べて副作用が少ないという利点から、長期使用が可能な場合があります。

しかし、全く副作用がないというわけではありません。

女性ホルモンに影響する薬ですので、更年期のようなのぼせ・ほてり・発汗・動悸などの症状が現れることがあります。

薬剤によっては長期使用することで、骨粗鬆症・血栓症・高脂血症・体重増なども見られる場合があります。

また、薬の種類によっては、卵巣機能が低下させたり、妊娠が難しくなるなどの薬もあるため、ライフスタイルや乳がんのタイプによって医師と相談することが勧められます。


乳がんの乳房再建術

人体の中で乳房は、すべて切除しても生命の維持には支障を来さない器官になります。

乳がん治療においては、根治のためには乳房を切除することが望ましいと長らく考えられてきました。

しかし、乳房は「女性らしさ」や「母親らしさ」のシンボルでもあり、乳房を失うことで喪失体験をする人もいれば、体の変化に気持ちがついていかなくなる人もいます。

このような乳房切除術によるQOL(生活の質)の低下を防ぎ改善するため、乳房再建術が発達してきました。

乳房再建術の呼び方

乳房再建術は、再建する時期により以下のように呼び名が変わります。
  • 一次再建:乳がんを切除する手術と同時に再建手術をする
  • 二次再建:乳がんを切除する手術を先に行い、時期を置いて再建手術をする
一次再建は再建方法をゆっくり考える時間がないものの、手術回数が少なく済むため、体の負担が少なく費用を抑えられるというメリットがあります。

また、乳がんの手術と同時に行うために乳房の喪失感は少ないと言われています。

一方、二次再建では乳がんの手術から半年以上経過した時期か、ある程度乳がんの治療が落ち着いてから再建をします。

二次再建では手術回数が増えるため、体の負担があることや費用が増えることがあります。

メリットとしては再建までの時間があるため、自分に合った再建方法を考えることができます。また、再建による合併症のリスクを減らすことができます。

尚、再建手術はその回数により呼び名が以下のように変わります。
  • 一期再建:再建手術が1回で終わる方法
  • 二期再建:2回手術して再建が終わる方法

どのように乳房を再建するのか

乳房の再建術には、人工物を使う方法と自分の組織を使う方法とがあります。

人工物を使う再建方法は、シリコンインプラントによる再建(ティッシュ・エキスパンダーという器具で組織を広げてからインプラントを入れる方法)です。

このシリコンインプラントによる再建は、手術時間が短い、再建手術の傷が目立ちにくいなどのメリットがありますが、自然な形を再現しづらい、体温を感じにくいなどのデメリットがあります。

一方、自分の組織を使う方法は、大きくお腹の組織を使う方法(腹直筋皮弁法と穿通枝皮弁法)と背中の組織を使う方法(広背筋法)があります。

自分の組織での再建は、自然な形を作るのに向いていますが、手術時間が長く傷跡が再建組織に残りやすくなります。また、移植した皮弁が壊死する合併症を起こす可能性があります。

乳房再建術は、乳房の大きさや形、皮弁が確保できるかどうか、どのようなライフスタイルを希望するうか、どのような乳がんの手術を行ったかなどを踏まえて再建方法が考えられます。

また、今後の妊娠希望の有無によっても勧められる再建方法は異なりますので医師とよく相談することが勧められます。

乳がんの緩和ケア(緩和治療)

緩和ケア(緩和治療)とは、主に症状を軽減することを目的とした治療で、がんを治すための治療ではありませんが生活の質(QOL)の向上を目指します。

乳がんで考えられる苦痛と緩和ケア

乳がんのステージⅢやⅣでは、転移や大きくなったがんによって、痛みや出血、リンパ節転移による腕の浮腫やしびれ、他の臓器による症状など、様々な身体的苦痛が生じることがあります。

また、乳房を侵されるため、女性としての尊厳が損なわれたような気持ちになったり、手術などによるボディイメージの変化を余儀なくされたり、がんということで孤独感や不安感などの精神的苦痛を伴うこともあります。

さらには身体的・精神的な苦痛により、日常生活に支障を来し、母親としての役目が果たせないなどといった社会的苦痛を感じる方もいます。

このような様々な苦痛を伴う症状をできるだけ軽減して、日常生活においてのQOLを向上させる治療が緩和治療(緩和ケア)です。

緩和ケアを聞くと終末期医療を想像する方も少なくありませんが、必ずしも終末期だけのものではなく、精神的不安は早期の方でも十分に持ちうるものです。

むしろ、医師や看護師は緩和ケアを専門に行っていますから、症状で長く苦しむよりは、早くから相談しておいた方が良いかもしれません。

また、入院だけでなく在宅でも緩和ケアは受けることが可能で、がんに対する根治的治療とを同時に受けることもできます。

緩和ケアにおける治療法とは

緩和ケアには、薬物療法・放射線療法・外科的治療など、様々な方法があり、精神的苦痛や社会的苦痛に対しては、カウンセリングなどが行われます。

薬物療法

薬の内服や注射などによる治療です。痛み・吐き気・不安・不眠・しびれなど様々な症状に応じて薬が処方されます。

痛みに対しては医療用麻薬が使われることもあり、炎症がある場合には消炎鎮痛剤との併用がよくされます。

現在、医療用麻薬の副作用は軽減されており、消炎鎮痛剤など他の鎮痛剤との組み合わせなどから、痛みのほとんどがコントロール可能です。

また、緩和ケアのための薬によって、生存率や根治的治療の結果に影響することはないので、安心して他の治療と併用することができます。

在宅で受ける場合も薬を持ち帰って自己管理したり、緩和ケア外来への通院や訪問看護を受けることも可能です。

放射線治療・外科的治療

リンパ節転移や遠隔転移(乳房以外の臓器)によって、リンパ節転移による浮腫、骨転移による痛み、脳転移による頭痛・吐き気・痙攣などの症状が現れることがあります。

このような場合、放射線治療でがん組織を小さくし、症状を和らげることができます。

乳がんが進行してくると、皮膚表面の痛みや出血することがあり、部分的に軟膏で処置したり切除や焼灼したりする外科的処置で症状を抑えることができます。


乳がんの手術後(治療後)の生活

乳がんの手術後、体はどのような状態になるのでしょうか?手術が終わって一晩、朝まではベッドの上で安静の状態です。

麻酔から覚めるには手術後から数時間はかかり、呼吸を安定させるための酸素を吸入し、排尿のためのカテーテルが入っています。

おおむね翌朝、全身状態の安定を確認した後、酸素や尿のカテーテルが外され、歩行や食事が始まります。

胸の傷には出血を抑えるため、バストバンドなどで圧迫されている場合や出血やリンパ漏の有無を確認するため、ドレーンというチューブが入っています。

バストバンドやドレーンは、医師の指示により数日続くことがあります。

痛みは手術当日から2~3日がピークで、痛み止めを使うことができます。

手術の内容によって入院期間はまちまちです。食事がしっかりとれて日常生活に問題なければ退院できます。早い方なら手術後2~3日で退院となります。

ドレーンが入っている場合、ドレーンが抜けてからの退院になります。

術後のリハビリ

歩行は手術の翌日からできることがほとんどです。

手術の合併症・後遺症として、手術した側の肩の運動障害やリンパ浮腫があります。手術で切除した範囲が広いほど、これらの合併症のリスクが高くなります。

特に乳房切除術(乳房全摘術)では、かなり腕を動かしにくくなったり、リンパ浮腫が起こりやすいと言われています。

これらの合併症を予防・軽減するために大切なのが肩関節のリハビリです。

出血の危険がないと医師の判断を受ければ、肩関節や腕を動かすリハビリを開始します。手術の傷のために肩や腕を動かしにくくなりますが、早いうちから肩関節を開く運動をすることが大事です。

体や傷の回復を促すために

退院後も規則正しい生活を心がけ、適度な運動と休養や睡眠を取ることが大事です。

腕に強い負担がかかるような運動は、医師の許可が出るまで避けた方が良いですが、ウォーキングなど適度な運動は可能です。

重労働でなければ仕事への復帰も可能です。ストレスを避けるため、趣味を楽しむのも良いでしょう。

手術後の傷について

手術方法にもよりますが乳房の手術では、手術後の傷が気にならないように抜糸が必要ない方法で傷を縫ってあることがあります。

手術後翌日から翌々日には、おおむねシャワーは可能です。感染予防のため、湯船につかる入浴については医師に確認できてからにしましょう。

また、手術をした側の腕で重い荷物を持ったり強い負担をかけると、傷の負担になったりリンパ浮腫のもとになることがあるので避けるようにしましょう。

乳がんの術後の食事

手術直後の数時間は麻酔が抜けない状態です。麻酔が切れれば、医師や看護師の確認のもとで水分摂取は可能になります。

乳房の手術では消化管に傷があるわけではありませんので、おおむね手術の翌日から通常の食事を摂ることができます。

麻酔の影響で吐き気などがある場合、制吐剤で抑えることができます。

嗜好品は摂っても大丈夫?

手術後はもちろん、入院中は禁酒・禁煙です。

アルコールでは出血の可能性があるため、退院後の飲酒については医師に確認してからにしましょう。

アルコールの摂取が乳がんの発生リスクに影響があるとの報告もありますが、手術後の再発への影響などについては詳しくはわかっていません。

いずれにせよ、多量の飲酒は控えましょう。また、薬物の治療中でも控えることが好ましいでしょう。

喫煙は毛細血管を収縮させ、血中の活性酸素が増えるために傷の回復を損ねる恐れがあり、また、手術では全身麻酔のため、喫煙歴があると呼吸器合併症のリスクが高くなると考えられています。

手術が決まったら禁煙しましょう。病院によっては喫煙していると手術を受けられないこともあります。

また、退院後も禁煙を継続することが望ましいです。傷の回復が遅れますし、タバコは多くのがん発生のリスク要因です。

傷の回復や今後の再発のリスクを考えれば、禁煙が望ましいと言えるでしょう。

カフェインや刺激物については特に制限はありません。摂りすぎはお勧めできませんので、医師に確認しながらストレスがないように適度に摂ることを考えましょう。

乳がんの術後の食事

手術翌日から通常の食事に戻り、他の疾患(糖尿病や腎臓病・心臓病など)がない限り、乳がんに対しての特別な食事制限や食事療法はありません。

傷の回復を促すためにも再発予防のためにも、色々な食材を偏りなく摂ることが望ましいでしょう。

手術後には薬物療法が控えている場合があります。

抗がん剤治療では、吐き気によって食事が十分に摂れなくなることがあります。その時には制吐剤を使いながら嗜好に合うものを摂取しましょう。

大豆イソフラボンには、女性ホルモンと似た作用があります。

乳がんの予防や発生に影響があるとされていますが、はっきりとはされていません。ホルモン療法を受ける場合には、サプリメントなど高濃度のものを摂る場合には医師に相談しましょう。

また、肥満と乳がんの発生には高い関連性が指摘されています。脂肪の摂取量が乳がんの再発との関連している可能性があるという報告があります。

脂肪や糖分を取りすぎず、適正な体重を維持することは、乳がんの再発だけでなく他の病気のリスクを下げることに繋がるので気を付けたいところです。


乳がんの再発・転移

再発とは、治療・手術後に再度同じ形のがんが発生することを指します(違う形のがんが見つかったときは「新しく別のがんができた」と見なされます)。

一方の転移とは、がん細胞が血液やリンパ液などを通し、最初にがんがあった臓器から離れたところにがんが起こることを指します。

乳房は、血管やリンパを富んだ臓器です。乳がんにおいては早い時期からリンパや血液にのって全身に運ばれていることがあり、手術後でも目に見えないがん細胞が残っている可能性があることになります。

このため、治療後においても再発や転移などが起こることががあるのです。また、遺伝性の乳がんでは、手術後の乳房や反対側の乳房に、がんが再発しやすいことが知られています。

再発のリスク・再発したときの治療

手術をした乳房に同じタイプのがんが再発することを局所再発と呼ばれ、また、手術後と同じ側の腋窩リンパ節の転移が起こることを領域再発と言います。

初発の際にがんの進行度(病期・ステージ)が診断されますが、ご存知のようにステージ0は非浸潤性乳がんでステージⅠは、がん組織が2cm以下で転移がない状態になります。

これらの場合、再発のリスクは少なく、数~10%程度と言われています。

ステージが進行するほど局所再発のリスクは高まり、ステージⅡで40%程度、ステージⅢでは、50%以上だと言われています。

局所再発や領域再発した時の状況は、患者さんによって異なるため、治療方法も変わってきます。

再発した時の転移の有無や程度、その方の体力、希望する治療方法などが考慮されます。

初回治療の手術後において、局所再発や領域再発となっても状況に応じて手術が適応され、根治を目指すことができます。

状態に応じて薬物療法や放射線療法が選択されるときもありますし、色々な治療の組み合わせが検討されます。

遠隔転移について

がんが発生した場所から離れた臓器に転移が確認されることを遠隔転移といいますが、初発で転移が起こる場合と、手術などの治療後で遠隔転移として再発が起こる場合(遠隔再発・転移性再発)とがあります。

いずれも状態としては、乳がんが他の臓器で病巣を作っている状態です。

遠隔転移は、血流にのってがん細胞が運ばれるため、遠隔転移しやすい臓器も主に血流に富んだ、肝臓などが挙げられます。

遠隔転移が起こると、その臓器に応じた症状が起こります。

治療方法は、薬物療法や放射線療法が中心となりますが、転移の状況はその方によって大きく異なるため、治療もその状態に応じて選択されます。

乳がんの転移に対する治療

がん細胞がリンパ節に転移することをリンパ節転移、また、血流に乗って、脳・骨・肺・肝臓などの乳房から離れた臓器に転移することを遠隔転移と言います。

乳房は血管やリンパに含む臓器であるため、乳がんは比較的早期から目に見えないがんが、全身に運ばれていることがわかってきています。

しかし、そのすべてが転移を起こすわけではなく、免疫によって多くの転移がんは発生が抑えられている状態です。

一方、手術においてがん病巣を切除しても、小さながんが残っていることがあり、術後から数年経過した時に再発として転移が見つかることもあります。

リンパ節転移への治療

手術前にはリンパ節転移が確認されず、術中のセンチネルリンパ節生検でリンパ節転移が認められた場合や、ステージⅡ程度でリンパ節転移が現局されている場合には、手術の際にリンパ節郭清が行われます。

診断時に広範なリンパ節転移が認められるステージⅡ~Ⅲでは、術前薬物療法で病巣を小さくしてから手術を行うこともあります。

遠隔転移への治療

遠隔転移がある状態は、病気分類で言うとステージⅣとなり、治療方法は薬物療法が中心になります。

また、遠隔転移によって日常生活が支障を来すような場合には、症状を軽減するための緩和治療も同時進行で行われます。

乳がんによる遠隔転移は、あくまでも乳がんの転移であることから、肝臓に転移した場合は、肝臓がんではありません。

このため薬物療法は原発巣の乳がんと同じ方法が選択され、抗がん剤治療だけでなく、ホルモン療法やHER2陽性であれば分子標的薬治療を行うことができます。

それぞれの臓器に適した治療を受けることが可能となり、部位によっては放射線療法を併用することができます。

乳がんの治療費(公的な助成制度)

乳がんを罹患した場合、診断のための検査や手術、薬剤・放射線治療など様々な費用がかかり、通院や検診も数年に及びます。

乳がん治療の一つであるホルモン治療においては、治療期間が数年に渡り、また、薬剤としては高価なものが多くなることがあります。

通常、がんを患うと治療は長期に渡り、仕事を続けることが困難になるなど、病気だけでなく経済的な部分が悩みの種となってくることを考えておかなければなりません。

治療の方法によって費用は異なってきますが、治療前に大体の費用や、利用できる助成制度を知っておくことで備えができるかもしれません。

高額療養費制度

高額療養制度とは、1ヵ月間(毎月1日~末日まで)の医療費が一定金額を超えると、超えた金額に対して助成が入る制度です。

医療費の限度額は、前年の所得と年齢に応じて決まります。また、世帯内での合算や1年での制度の利用回数が多い場合さらに上限額が下がるなどの負担軽減もあります。

手続きや限度額については、公的医療保険の加入先(国保・健康保険組合・協会けんぽ・共済組合・後期高齢者医療制度など)に問い合わせることで確認することができます。

役所等で発行してもらい病院へ提出します。先に提出しておけば精算時に相殺してくれますので、予め確認しておきましょう。

但し、健康保険の滞納や未払いがあると発行されませんので注意しましょう。

乳がんの治療のおおよその費用

乳がんの治療では、乳房再建術まで含め、ほとんどが医療保険の適応です。以下に主な治療法と医療保険適用後(3割負担)の治療費を挙げていきます。

但し、先程お話しました高額療養制度を利用することで、上限を超えたものは助成されます。

※医療機関によっては異なる場合がありますので、目安程度に参考にしてください。

手術療法(10日前後の入院)

総額:約70万円(自己負担約20万円)
※乳房切除術ではさらに総額が10万円程度増える見込み

放射線療法(25回・5~6週間での総額)

総額:約30万円(自己負担約10万円)

術後再発予防化学療法

年間総額:約70~100万円(自己負担約25~30万円)
※薬剤により金額に差があります。

術後分子標的療法

年間総額:約230万円(自己負担約70万円)

ホルモン療法

年間総額:15~50万円(自己負担約5~15万円)
※使用するホルモン剤の種類によって金額に差があります。また、治療年度によってもかかる費用が変化します。

医療保険の範囲外となる費用

病室の室料・ベッド代は、医療保険の範囲外となります。個室などに入院された場合、上記に加えて別途費用がかかります。

また、先進医療となるものや高度な治療では、公的医療保険の対象外となり自己負担となり、免疫細胞療法や人工乳房での再建手術などがこれにあたります。

遺伝性乳がん・卵巣がん症候群にかかる遺伝子検査も保険対象外となり、自費での検査となり、医療機関にもよりますが、通常は数万円がかかると言われています。


乳がんの検査と診断

乳がんを調べる検査には色々ありますが、最も基本的なのが、問診視診触診生体検査になります。

最初に行われるのが画像検査となり、乳がんの場合ではマンモグラフィー、さらに超音波検査が行われたり、両方を行われる場合があります。

乳がんの基本検査は、違和感を感じている等の症状がある場合をはじめ、乳がん検診でも同様の内容になります。

乳がんの基本検査からわかること

基本検査では幾つかの診察と検査が組み合わせられ、「乳がんの疑いがあるか」までを診断することができます。

乳がんの疑いがあると診断された場合、マンモトーム検査乳管造影検査など他の精密検査(二次検査)を行い、乳がんの確定診断が行われます。

また、精密検査として転移の有無や状態について調べるため、CT・MRI・腹部超音波・骨シンチグラフィーなどが行われることもあります。

乳がんの基本検査の流れ

最初に問診表に記入するのが一般的です。診察を受ける場合には医師から直接質問されることもあります。

その後、視診を行って見た目での乳房の異常の有無を確認したら触診が行なわれます。

その後、マンモグラフィーや超音波検査が行われますが、マンモグラフィーや超音波検査は診察と別日に行われる場合があります。

画像検査と視触診などの結果を総合して医師が診断し、後日に結果が伝えられます。

尚、乳がん検診においては、検査人数が多くなることを予測し、医師の診察の流れをよくするために視触診と画像検査の順序が逆になったり、最終診断と視触診を同時に行なわれることもあります。

問診

乳がんにおいての主な問診内容は、「自覚症状はあるかどうか」、「血縁のある家族に乳がんや卵巣がんにかかった人はいるか」、「定期的ながん検診の有無」、「自己検診を行っているか、また、その頻度はどのくらいか」などになります。

遺伝性の乳がんがあることは、アンジェリーナ・ジョリーの話などで知られましたが、血縁者に乳がんがあるかどうかは一つの判断材料となることもあります。

また、定期的な検診や自己検診を受けることは、乳がんの早期発見に役立つという報告があります。

視診・触診

乳がん検診と聞くと視診や触診をイメージされる方が多く、若い女性になると検診をためらう方も少なくありません。

しかし、近年では乳腺外科においては女性医師が増えています。

また、医療機関や検診機関により、女性医師を希望できる病院も増えていますので予め確認してみましょう。

また、男性医師が診察する場合、通常は看護師が立ち会うようになっています。

視診では「乳房の変形の有無」、「左右の乳房の形の差」など外見上の変化を見る診察になります。

一方の触診では、乳房や腋の下、鎖骨回りなどのリンパ節に触れて、しこりやリンパ節の腫れなどがないかを調べていきます。

乳がんは皮膚の外から触れて確認することができるがんです。

古くから行われている方法ですが、体への負担がなく、熟練した医師になると、数ミリ程度の小さながんも見つけられるケースもあります。

マンモグラフィー・超音波検査

視診や触診は体の外からの検査ですが、乳房の中はマンモグラフィーや超音波検査といった生体検査(画像検査)によって確認することができます。

外からでは確認できない小さなしこりを確認したり、触診での異常の有無と照らし合わせて乳がんの疑いがあるかどうかを調べます。

乳がんのセルフチェック

乳がんのセルフチェックには、どのような意義があるのでしょうか?

乳がんでは、腫瘍の大きさが2㎝以内でリンパ節などへの転移がないものを初期の乳がんと呼びます(ステージ0~Ⅰ)。

ステージⅠの状態であれば、最近の統計調査での5年生存率は99%を超えています。つまり、早期発見・早期治療によって治癒する可能性が高いがんだと言えます。

また、乳がんが他の臓器のがんと大きく違う点は、「乳がんの多くは体の表面から触れることで気づくことができる」ということです。

乳がんも他の臓器のがんと同様に初期段階では、症状が乏しいことがほとんどです。

しかし、例え症状が無かったとしても場合によっては、皮膚の上からしこりを触れるなどし、自ら早期に発見することも可能な場合があります。


乳がんのセルフチェックの方法

鏡の前で乳房の形などをチェック

乳がんの症状には、乳房の形の変化、えくぼのようなくぼみ、皮膚のひきつれなどがあります。

鏡の前に立って左右の乳房の形を比べ、形の違いや皮膚の変化を見比べましょう。

また、乳頭(乳首)の形の違いや凹みなどないか見ましょう。

両手を上げた状態で見比べ、両手を腰に当てた状態でも見比べてみます。

また、片側の手を上げた状態で手を上げている側の乳房を反対の手の平で下からそっと持ち上げて、これを左右行って見ましょう。

乳頭の皮膚の異常やかさぶたなどの有無にも気を付けましょう。

起きた状態で触れてチェック

片手を上げて手を挙げている方の乳房を反対側の手で触れて確認します。

親指以外の4本を揃えて指の腹で数cm大の円を描くように、まんべんなく乳房の上を指を滑らせて触れていきます。

しこりや硬い部分がないか、わきの下から胸の真ん中の胸骨まで、乳頭の周りなどももれなくチェックします。

ここまでは、お風呂などで石鹸などをつけると手が滑ってわかりやすいです。

最後に指で乳頭や乳房を絞るようにして分泌物などが出ないか確認します。

仰向けでもチェック

左の乳房を確認する時は、左の肩の下に枕を入れて左手を上げた状態で右手でチェックします(右の乳房の時は、逆にします)。

起きた状態と同じように乳房に触れてチェックをします。

乳がんのセルフチェックをする時のポイント

月1回ペースで定期的に行う

ところで早期乳がんの状態で治療を始めようと考えると、しこりは大きさ2㎝までで見つけなければなりません。

2cmだと親指大あるいはビー玉程度といったところでしょうか。

この大きさより小さいしこりを見つけるには、たまたま触っていて見つかるという風にはいきません。

また、乳がんが倍の大きさになるスピードは平均で3か月程度だと言われています。

できるだけ早くまだ小さい状態で乳がんを見つけるためには、月1回程度のペースでセルフチェックをするのが望ましいとされています。

月1回の目安としては、以下のようになります。
  • 閉経前:月経前後はホルモンの影響で乳房が張って、しこりがわかりにくいことがあるため、月経開始から1週間を目安に月経周期に合わせてチェック日を決めて行う。
  • 閉経後:毎月1回同じ日をチェック日と決めて行う。

乳がんのマンモグラフィー

マンモグラフィーとは、乳房専用のX線検査(レントゲン検査)になります。

脂肪組織は、黒っぽく映り、腫瘍・線維化・石灰化・発達した乳腺など変化した組織は白っぽく映ります。

腫瘍の部分が白く映ることで、乳がんの有無・乳がんの位置・形・大きさなどが確認できます。

乳がんの早期発見に有用だとされていて、視診・触診とともに乳がん検診では主流の検査となっています。

検査の流れ・検査方法

検査機の前に立ち、片方の乳房を検査機に挟み込み、薄く伸ばした形でX線を当てて撮影します。

異常があった場合、1方向からの撮影では異常な組織の形や位置がわかりづらいので、乳がんを見つけるため、通常は2方向(縦と斜め)からの撮影を行います。

左右片方ずつの乳房についてこの撮影を行うため、通常は4回撮影します。

乳房の形や弾力により、乳房を挟んでの撮影が難しい場合があるため、画像を確認しつつ時には数回撮り直しが行われますが、全方向撮影して検査時間は5~10分程度でしょう。

マンモグラフィーのメリット

マンモグラフィーでは、視診や触診では見つけづらい小さな数ミリ程度の乳がんも発見することが可能です。

このため、マンモグラフィーによる乳がん検査は、乳がんの死亡率を低下させることに大きく貢献してきました。

乳がんは40代~50代前半が発症のピークですが、40代からの乳がんの早期発見にはマンモグラフィーの使用が推奨されています。

従来、乳がん検診の推進運動も進んできたため、マンモグラフィーは検査機を搭載した検診車などもよく見かけます。

撮影回数が多いので放射線の被ばくを心配する方もおられますが、撮影回数が増えることを考慮して早くから撮影技術が進歩して来たため、実際の被ばく量は他の放射線検査と比べるとかなり少なくなります。

基本的には妊娠中や授乳中でも撮影にはリスクはないとされています。

マンモグラフィーのデメリット

マンモグラフィーは乳房を押しつぶすような方法で撮影を行うため、撮影の際には多少の痛みが伴うことがあります。また、撮り直しのために検査に時間を要することもあります。

マンモグラフィーは撮影技術が難しく、乳房の形によっては撮影しにくいケースなどがあり、乳房の端や奥の方になると撮影漏れのリスクはあります。

また、画像は乳房が変化した部分が一様に白く映るため、白い影だけを見ると乳がんと他の病気などとの判別が難しい場合があります。

若い女性で乳腺が発達した方になると、乳房全体が白く映ることから、こちらも乳がん判定が難しいことがあります。

このようなことからマンモグラフィーだけでは、乳がんの判定はせず必ず視診・触診を併用します。

また、マンモグラフィーで乳がんの判定が難しい場合、乳腺超音波検査やCT検査などの精密検査を行い、生検で組織を直接調べる場合があります。

新しいマンモグラフィーの検査機器

マンモグラフィーは画像の解釈が難しいため、その問題を解消すべく一方ではデジタル解析技術が進歩し、画像の解像度もかなり上がっています。

例えば、デジタルマンモグラフィーは、マンモグラフィーと同様に撮影した画像をデジタルモトシンセンスという技術により、解像度を上げつつ、多角的にスキャンすることで立体的に描画することができるもので、いわば3Dマンモグラフィーとして見ることができる検査になります。


乳がんの超音波検査

超音波検査(エコー検査)とは、体の表面に超音波を当てて、その反響で体の内部の状態を見る画像検査になります。

超音波は硬いものと柔らかいものに当たるのとでは反響の仕方が異なります。

この性質を利用して画像にすることで、体の中にある部分の性質がわかってくるのです。

乳がんの超音波検査では、「乳房に異常な部分がないかどうか」、「しこりの性質はどんな性質か」、「どのくらいの位置・深さにあるか」、「大きさはどうか」、「周りの組織との境界線はどのようになっているか」などが確認できます。

また、腋の下・鎖骨周り・胸骨の周り、リンパ節への転移の有無も調べることができ、さらに数ミリ程度の小さな異変を見つけることも可能になります。

マンモグラフィーでは見分けがしにくい状態、例えば、乳腺症と乳がんとの区別がしやすいのも超音波の特徴です。

超音波検査は乳がんのスクリーニング検査に用いられ、マンモグラフィーとの併用することで初期乳がんの発見率が上がるとされています。

さらに乳がんの手術をする前に腫瘍の位置や大きさや切除部位をマーキングする時にも使用されることがあります。

検査の流れ・検査方法

ベッドの上に横になり、乳房の表面に超音波を通しやすくするためのゼリーを塗ります。

超音波が出るプローブという部分を見たい位置に当てて画像を映します。検査時間はおおむね10~20分程度で、見落としのないようにじっくり見ていくことが多いです。

超音波検査のメリット

超音波検査はほとんど体にリスクや負担がない検査です。合併症も無く、放射能被曝もありません。妊娠中や授乳中でも問題なく行える検査です。

使用する機器も小型のものがあり、病室でも検査が可能となり、その場ですぐに画像を確認できます。

超音波検査のデメリット

超音波検査は実施する人の超音波の当て方によって、精度が変化しやすい検査になります。

プローブの当て方によっては見落としの可能性もなきにしもあらずと言えます。

このため、超音波検査では見落としのないように時間をかけて検査が実施されます。

新しい検査機器

乳房超音波検査の新しいものとしては超音波エラストグラフィー(組織弾性映像法)があります。

超音波で調べた組織の硬さをコンピュータ解析して色で画像に表示したもので、しこりの硬さの違いを判別することができます。

また、しこりが良性か悪性かを詳しく調べることができるとされています。

乳がんのセンチネルリンパ節生検

センチネルとは「見張り役」という意味で、がんがリンパ節に転移する時に一番最初に転移しやすいリンパ節のことをセンチネルリンパ節と言います。

乳房はリンパ節が多くあるため、がん組織が大きくなくてもリンパ節に転移することがあります。

センチネルリンパ節生検とは、転移をおこしやすいリンパ節の組織を調べることで、できるだけ早くリンパ節転移(リンパ行性転移)を見つけるための検査になります。

センチネルリンパ節生検でわかること

センチネルリンパ節生検で乳がんのリンパ節転移の有無を知ることで、乳がんの手術の時に腋の下のリンパ節も一緒に切除するかの判断ができます。

以前までは転移を防ぐためには、腋の下のリンパ節も切除するのが望ましいとされていましたが、リンパ節を切除するとリンパ浮腫という重い後遺症のリスクを高めることになりました。

このため、取らなくて済むリンパ節は残せるようにセンチネルリンパ節生検が積極的に行われるようになりました。

また、現在ではセンチネルリンパ節の微小転移があっても、5年生存率にはあまり差がないことが報告されています。

このため、数個の微小転移の場合も腋窩リンパ節の切除は行わないのが通例になっています。

センチネルリンパ節生検の適応

比較的がんの大きさが小さく、手術前の画像検査などではリンパ節転移が確認的ない場合が適応になります。

手術前からリンパ節転移が明らかな場合、適応にはなりません。

検査の流れ・検査方法

一般的に手術時にセンチネルリンパ節の採取が行われ、センチネルリンパ節生検が単独で行われることは少ないです。

手術中にセンチネルリンパ節を見つけるための色素を注射して染色し、検査に必要な組織を採取します。

センチネルリンパ節生検が適応となるのは、がん組織も小さく切除範囲も小さな乳がんになりますので、センチネルリンパ節生検も含めて手術全体にかかる時間はおおむね2~3時間です。

センチネルリンパ節生検の合併症と後遺症

合併症としては稀にですが色素によるアレルギー反応が起こる場合があります。

後遺症ではリンパ浮腫があり、センチネルリンパ節の組織を採取するだけで、腋窩リンパ節の手術をした時に比べるとリスクはかなり低いです。

リンパ浮腫を起こすと生検をした側の腕が、極度にむくみ、冷え・しびれ・痛み・不快感・傷が治りにくいなどの症状を引き起こす場合があります。

新しい検査機器・検査方法

センチネルリンパ節を見つける方法には、色素法の他にラジオアイソトープ法という方法があります。

ラジオアイソトープ法は専用の機器が必要になるため、生検を行える施設は限られています。

センチネルリンパ節生検の費用

センチネルリンパ節生検は、保険適応です(自費検査を除く)。

費用は3割負担で1万円程度で、手術と同時に行われるため、これに手術費用や入院費用が加わります。


乳がんの乳管内視鏡検査

乳管とは乳腺で作られた乳汁を乳頭(乳首)まで運ぶ管で、乳がんの約9割がこの乳管の細胞から発生します。

乳管内視鏡検査とは、乳管に細いカメラを挿入し、乳管の様子やがんの有無等を直接見て確認する検査です。

乳管の細胞から発生した乳がんの多くが乳管の外に進行し、しこりを作ります。

しかし、一部の乳がんには、乳房の中を枝のように通っている乳管の内側に沿って進行していくものがあり、この場合は初期でしこりは触れません。

また、乳頭からの分泌物や血液が混じっていてもマンモグラフィーや触診では、しこりの存在が確認できないため、乳がんの判断がはっきりしないことがあります。

このような時に乳管内視鏡検査では、乳管の中を直接見てがんなど異常の有無を確認することができます。

検査の流れ・検査方法

乳管内視鏡検査は、主に乳管造影法の後に引き続き行われます。

分泌物が出ている乳管に乳頭から細い棒状の器具を入れ、徐々に太いものに変えていきます。

しっかりと乳管が開いたら生理食塩水で乳管の中を掃除してきれいにします。

次に乳管に太さ1mm以下のカメラ(ファイバースコープ)を挿入し、乳管の内側を観察していきます。異常な部分があれば細胞を採取し、顕微鏡で検査することもできます(細胞診)。

ここまでで乳がんではなく、細菌感染などの炎症が起きている状態であれば、洗浄作業によって乳管がきれいになることで多くは症状が改善に向かいます。

検査時間は乳管の状態によって幅がありますが、乳管造影法よりは時間がかかることが多くなります。

乳管内視鏡検査のメリット

非浸潤型や乳管内進展型の乳がんを直接見て見つけることができます。

また、異常な部分の細胞を直接採取し、顕微鏡の検査に出すことが出来ますので確定的な診断が可能になります。

乳管内視鏡検査のデメリットと合併症のリスク

乳管内視鏡検査では、医師がどれほど技術に熟練しているかによって、検査時間や痛みなどが左右されます。

また、乳管の状態により、時間がかかる場合や強い痛みを伴うことがあります。

使用するカメラは、髪の毛のような太さで非常に細く、洗浄時に麻酔効果がある薬剤を同時に注入し、痛みを軽減してくれる医療機関もありますので痛みを感じずに済むこともあります。

痛み以外には合併症のリスクは少なく、洗浄を行うため、感染のリスクも少なく検査当日には入浴を控える程度です。

尚、乳管内視鏡検査は行っている医療機関は限られていますので確認が必要です。

新しい検査機器・検査方法

乳管内視鏡検査は、技術的な問題や痛みを伴う恐れのある検査です。

このため、痛みを伴わず検査施行者の技術に依存せずに乳管を調べる新しい検査法の技術開発も進められています。その一つがバーチャル乳管内視鏡です。

超音波検査を最新の画像解析技術で3D化することにより、あたかも内視鏡のように乳管の中を画像化する技術で実用に向けて研究されています。


乳がんの乳管造影法

乳管とは、乳房に枝のように分布していて、乳腺で作られた乳汁を乳頭まで運ぶ役割をする管になります。

乳管造影法(乳管造影検査)とは、乳管に造影剤を注入してX線撮影(レントゲン撮影)することで、乳管の構造の様子や異常の有無を見ることができる検査です。

乳がんの症状の一つに「乳頭から分泌物が出る」、「乳汁に血液が混じる」というものがあります。

乳がんの多くは乳管の細胞から発生しますが、しこりを作らないような早期乳がんの場合や、しこりを作らずに乳管の中を進んでいくようなタイプの乳がんでは、上記のような症状がありながらもマンモグラフィーなどの画像検査でがんが見つからないことがあります。

このような場合、乳管造影法によって乳管の状態を確認することで、乳管の異常や乳がんが疑われる部分の有無を調べることができます。

乳管を造影することで乳管の細くなっている箇所、凸凹した箇所、詰まっているところなど、乳がんだと疑われる部分が詳細に確認できます。

検査の流れ・検査方法

乳頭(乳首)とは、15本ほどの乳管の出口の集まりです。この集まりから分泌物が出ている乳管に細い管を入れて造影剤を注入します。

管はそのままでは入りにくいため、管を通す前にゾンデという細い器具で乳管を拡げます。

造影剤を注入したらマンモグラフィーを撮影します。マンモグラフィーとは、乳房を板で挟んで薄くした状態で撮影する乳房専用のX線撮影です。

造影剤が漏れないように乳頭をゴムなどで縛って撮影します。検査時間はおおむね15分程度です。この後に乳管内視鏡が続けて行われることもあります。

乳管造影法のメリット

この検査は、乳管内進展型の乳がんを見つけるのに役に立ちます。

乳管の中を知る検査としては、比較的体に負担が少なく容易に短時間で行え、痛みなどの苦痛も少ない検査です。

また、マンモグラフィーは、放射線の被ばく量もとても少ない検査になります。

乳管造影法のデメリット・合併症のリスク

乳管の形や影を見る検査では、乳管の中を直接見ることはできません。このため、乳管造影法で異常があれば乳管内視鏡で乳管を直接確認することになります。

造影剤の注入は医師の技術の熟練度によっては痛みを伴うことがあります。また、造影剤が出ないようにゴムなどで乳頭を縛るのにも痛みが多少伴います。

また、マンモグラフィーのために乳房を板で挟む時にも痛みが伴うことがり、施行には医師の技術が必要なため、実施されている医療機関は限られています。

合併症としては、造影剤によるアレルギー反応のリスクが考えられます。

新しい検査機器・検査方法

乳管造影法は技術的にも難しい場合があり、痛みなどの体の負担をを伴うことがあります。

このため、しこりを触れにくい乳がんに対してはMRIを活用している医療施設もあります。

また、乳管を調べる新しい検査法としては最新の画像技術を活かし乳房超音波検査をさらに立体画像化したバーチャル乳管造影が開発・研究されています。

乳がんのマンモトーム検査

マンモトーム検査(マンモトーム生検・吸引式組織生検))とは、乳房の組織を採取して顕微鏡で組織や細胞を見る検査で組織診検査(生検)の一種です。

乳がんが疑われる部分の組織や細胞を直接見て診断できるので、乳がんの確定診断に用いられることが多くなります。

検査の流れ・検査方法

マンモトーム検査では、皮膚の上から注射針よりも太い針を刺し、異常があると思われる組織を採取します。採取時、確実に狙った組織を採取するため、画像検査のガイドとともに行われます。

マンモグラフィーのもとで行われるマンモトーム検査をステレオガイド下吸引式組織生検、超音波検査(エコー検査)のもとで行われるマンモトーム検査をエコーガイド下吸引式組織生検と呼ばれます。

ステレオガイド下吸引式生検の場合

マンモグラフィーとは、乳房を挟んで撮る、乳房専用のX線検査(レントゲン検査)のことです。

ステレオガイド下吸引式生検の場合は、マンモグラフィーで位置を確認しながら組織を採取していきます。

検査台によっては、うつ伏せ寝の状態で行う場合や座って行う場合があります。

いずれもうつ伏せ、もしくは座った状態で乳房を板で挟み込み、撮影して採りたい組織の位置を確認します。

組織を採取する部分に局所麻酔をかけます。麻酔が効いてきたら数ミリ程度を切開し、そこから3ミリ程度の組織採取用の針を刺していきます。場合によっては角度を変えて数回採取することもあります。

採取が終わったら数分~10分程度医師が圧迫止血をします。さらに消毒して絆創膏などを貼り、止血のためにテープとガーゼなどで圧迫固定します。検査時間は30分~1時間程度です。

傷口の圧迫は翌日に外し、外来で行う場合は自宅で自分で外します。病院や患者さんの状態によっては入院して行うこともあり、その場合は医師か看護師が外すことが多くなります。

傷口は小さく、縫う必要はありません。また、1~2か月程度で目立たなくなります。

エコーガイド下吸引式生検の場合

エコーガイド下でマンモトーム検査を行う場合、ベッドなどに仰向きに横になって行います。それ以外はステレオガイド下と検査方法にはほとんど変わりはありません。

マンモトーム検査のメリット

マンモグラフィーや超音波検査は、乳がんの画像を見るだけなので画像を見ても乳がんだと確定することはできません。

また、他の病気などと区別がつかないこともあります。

これに対してマンモトーム検査では、組織や細胞を直接見て判断ができるため、より確定的な診断ができ、がん細胞の性質などについても調べることができます。

また、マンモトーム検査を使うことで画像では見つかりにくい非浸潤性乳がん(かなり早期の乳がん)の発見率が上がったという報告などがあります。

注射針などより細い針を使って細胞を吸引して行う細胞診よりも多くの組織を採取できるため、より確定的診断が行えます。

外科的に切開して組織を採る方法と比べると、体の負担も傷も小さくて済みます。

マンモトーム検査のデメリットと合併症のリスク

組織の採取のために切開し太い針を刺すため、局所麻酔が切れると痛みが現れることがありますが、翌日から数日で痛みは次第に軽快します。

合併症としては局所麻酔によるショックのリスクがあります。また、座って行う場合や仰向けで行う場合には、極度の緊張のために検査中に気分が悪くなる方もいます。

画像で位置を確認しながら針を刺しますので、誤った位置に刺すことはほとんどありません。

新しい検査機器

乳房のように柔らかい体の組織を映し出す検査としてはMRIがあります。

MRI下でマンモトーム検査を行っている施設も日本に数は少ないのが現状です。より詳しい画像を得ながら生検ができます。

マンモトーム検査の費用

自費検診以外、つまり乳がんの疑いなど何らかの病名がついている場合には保険適用となります。費用は3割負担で2万円程度です。

入院の場合は入院費用が加わり、医療機関によっては圧迫のためにバストバンドの費用が追加されることがあります。


乳がんの遺伝子検査

乳がん・卵巣がんにおいては、遺伝性のものが知られていて、乳がん全体の1割程度が遺伝性だと言われています。

また、がんが発生するには1つの遺伝子ではなく、幾つもの遺伝子が関連していると考えられています。

乳がん・卵巣がんに関連する遺伝子では、2種類の遺伝子が確認されており、BRCA1遺伝子BRCA2遺伝子と名付けられています。

これらの遺伝子は健常な人でも持っている遺伝子ですが、生まれつき(遺伝的)にこの遺伝子のいずれかに異常がある場合、乳がん・卵巣がんになりやすいことがわかっています。

これらの遺伝子に変異があることが検査で分かった場合、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)と診断されます。

乳がんの遺伝子検査でわかること

乳がんの遺伝子検査では、BRCA1・BRCA2遺伝子の異常の有無を調べる検査です。つまり、HBOCであるかどうかがこの検査でわかり、診断されます。

乳がんの遺伝子検査を行うのはどんなケース

以下のようにHBOCが疑われる場合に遺伝子検査が勧められることが多くなります。
  • 若年性(30歳以下程度)の乳がん
  • 原発性の乳がんが2か所以上に発生している
  • サブタイプ分類でトリプルネガティブの場合
  • 血縁者に乳がん・卵巣がん・膵臓がんの人がいる(母・姉妹・おばなど)
HBOCの乳がんを発症した場合、最初に発生した片側の乳がんへの治療を行っても、再び同じ側の乳房や反対側の乳房にがんを発生する可能性があります。

また、乳がんの治療後に卵巣がんを発症したり、卵巣がんの後に乳がんを発症することもあります。

遺伝子検査を行うのは、いわばこのリスクを知るためでもあります。

HBOCの方には乳房を温存できる場合でも乳房切除を選択するなど、場合によっては個別的な治療が必要かもしれません。また、治療後も継続的な検診が望ましいともいえます。

但し、BRCA1・BRCA2遺伝子に異常があるからといって、必ずしも乳がんや卵巣がんになるわけではありません。

現在のところスクリーニング検査のように予防的に乳がんのリスクを知るという目的での検査は行われていません。(希望すれば検査を受けることは可能)

検査の流れ・検査方法

遺伝子検査は採血で行われます。採取した血液のDNAを調べることで遺伝子の変異の有無がわかります。

検体を検査機関に提出して行いますので、遺伝子の解析結果が出るのに数日はかかる場合がほとんどです。

採血だけで済むので合併症などのリスクはほとんどありませんし、検査による苦痛や体の負担もあまりありません。

検査費用・保険適応

遺伝子検査は保険適応外ですので全額自己負担となります。費用は数万円以上で採血の技術料もかかります。

家族に乳がんや卵巣がんの人がいるので予防的に検査を希望する方もいらっしゃいますが、まずは医療機関に相談してみることが勧められます。

場合によっては定期的に検診を受けたり、遺伝カウンセリングを受けたりすることの方が好ましいかもしれません。

乳がんの検査費用

乳がんの自己チェックだけでは不安だし、詳細な検査を受けたいと思った時、どうすれば乳がんの検査を受けられるのでしょうか?

日本では地方自治体による乳がん検診は、40歳以上が対象となっています。

このため、乳がんの検査や検診を受けたい場合、40歳が節目となり、選択肢が異なってきます。

しかし、しこりなどの自覚症状がある場合には検診ではなく、医療機関で医師の診察を受ける形になりますので保険適応になります。

では、いくつかの条件について基本検査の費用を見てみましょう。

40歳未満で自覚症状がない場合

日本では公的検診は40歳以上が対象となっていますので、この場合は自己検診扱いとなり、地方自治体からの費用補助などはなく全額自己負担となります。

全額自己負担の場合、どのような検査を受けるかによって費用が異なります。

また、初診料や診察料が加わるため、どの医療機関で検査を受けるかによっても費用は異なりますので予め費用を確認しておきましょう。

よく行われている検査の参考の費用としては、マンモグラフィー超音波検査ではそれぞれ5000円前後位、両方受ければ1万円程度のところが多くなり、これに初診料・診察料などが加わります。

結婚して扶養に入っている場合、配偶者の企業などの健康保険、もしくは自ら働いている場合には雇用先の健康保険に入っていると思われますが、その保険組合の検診制度によっては検査を受けることができます。

保険組合の検診の取り扱いは、組合ごとにかなり異なりますので確認しておきましょう。

40歳以上で自覚症状がない場合

この場合は乳がんの公的検診の対象になり、通常、乳がん検診は40歳から2年ごとに行われています。

費用負担や検診の内容は自治体により異なり、おおむね0円~3000円程度です。

2年ごとに検診の実施のお知らせやクーポンを郵送している自治体もあります。また、自治体の広報誌などで検診の実施について知らせている自治体もあります。

自覚症状がある場合

しこりなどの症状がある場合、医療機関に受診して検査を受けるという形になります。

一般の診療と同じということになりますから、この場合は保険適応で3割負担となります。

二次検査や精密検査の費用は?

検診などで乳がんを疑う状態だとわかり、精密検査をする場合も一般の診療と同様で保険適応となります。

また、CTやMRIで1万数千円~2万円程度、マンモトーム検査で2万円程度、ここに診察料などが加わります。

どの検査を行うかによっても費用が異なります。心配な場合には予め確認しておきましょう。


参考文献等

  • 国立がん研究センターがん情報サービス「乳がん」
    東京都中央区築地5-1-1
    https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/
  • 乳がん検診info検診から確定診断まで「乳がんとは」
    東京都千代田区神田駿河台4-2-5
    http://www.devicormedicaljapan.jp/mmt/nyugan/index.html
  • がん研究会有明病院「乳がん」
    東京都江東区有明3-8-31
    https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/breast.html
  • 一般財団法人 西日本産業衛生会「乳がんについて」
    北九州市小倉北区室町3-1-2
    https://www.nishieikai.or.jp/headquarters/breast/
  • 日本医師会「乳がん検診」
    東京都文京区本駒込2-28-16
    https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/breast/what/
  • ピンクリボンフェスティバル「乳がんとは」
    東京都中央区銀座7-16-12
    http://www.pinkribbonfestival.jp/about/
  • 国際医学情報センター「がんinfo 乳がん」
    東京都新宿区信濃町35番地
  • https://www.imic.or.jp/library/cancer/009_breast.html
    乳がん関連専門サイト「乳がん・乳房再建~検診・治療・手術~」
    東京都千代田区三番町3-10
    https://www.saiken.info/index.html
  • 京都大学医学部付属病院乳腺外科「患者さんへ」
    京都市左京区聖護院川原町54
    http://www.brca.jp/consult/index.html
  • 「乳がんについて」
    http://www.brca.jp/about_disease/treatment/treatment_3/index.html

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